加曽利隆『中年ライダーのすすめ』(平凡社新書 1999)を読む。
加曽利氏はバイクに乗るということは日常の生活の時間を断ち切って、非日常を走るものだと定義づけている。確かに、バイクは車に比べ荷物も積み込めず、雨や風にさらされ、事故の危険度も高い。しかし、バイクにはその利便性や機能性を越えて、もっと思想的なものがあると私は感じる。ヘルメットを被ると、否応無しに自分と向き合わざるを得ない。車であれば音楽やラジオを聴きながら、また同乗者と会話を楽しみながら運転出来るが、バイクはそのような行為は許されず、ひたすら道を走る自分との対話しかない。それゆえに、日所生活の自分を客観視し、また明日へのロマンを培う時間となることもあろう。
私自身も結婚を機にバイクは売ってしまったが、またバイクに乗りたくて仕方がない。別に速くなくとも、パワーがなくとも構わない。気楽に日常生活から抜け出て、そして自分と真摯に向き合う時間がほしい。
ツーリングの最大のよさは、「道」ととことんつきあえることだ。道ほど魅力に富んだものはない。自分の家の前からはじまる道は、限りなくどこまでもつづく。その道沿いにはツーリングの魅力のすべてがつまっている。私はいったんバイクで走り出すと、際限なく、道のつづく限り、どこまでもどこまでも走り続けてみたくなる。行き止まりの道があれば、どうしても、その行き止まり地点まで行ってみないことには気がすまない。道の行き止まり地点のその先にある岬とか、滝にひかれるのはそのせいなのかもしれない。