黒川康正『整理力をつける』(日本経済新聞社 1997)を読む。
著者自身が公認会計士、弁護士、通訳の3足の草鞋を履いている多忙を極めるサラリーマンであり、その作者自身のスケジュール管理、人材活用のノウハウがぎっしり詰まっている。忙しいビジネスマンにとって仕事を効率的に行うための「ダンドリ」のつけ方を、手帳の記入法や、アドレス帳の整理の仕方に至るまで微に入り細にわたって解説が施されている。特にビジネス上の悩みの解決についての項目が興味深かった。仏教でいうところの「中庸」の教えに近い考え方が紹介されている。
私自身最近何事も悲観的に「つらい」「忙しい」と「形容詞的」にひと括りに生活全般を捉えているので参考にしたい。
自分の悩みを「形容詞的」に考えないことも重要である。「形容詞的」というのは、「恐ろしい」「こわい」「苦しい」「大きい」といった感情的な言葉で、考えることである。こうした形容詞でいつも自分の悩みを表現しようとするから、悩みの実態がわかりにくくなり、心理的な圧迫感を感じる。
そこで悩みを、比較しやすく、客観的な数字に置き換えることができれば、問題の解決が容易になる。悩んでいることが実際に起こった場合、被害額が100万円であれば、その悩みは100万円の悩みということになる。このように数量に換算することができれば、あとはそのことを覚悟するだけで悩みは解消する。(中略)数量化することで、いろいろなことが対比しやすくなって、客観的に問題を見つめることができるようになる。数量化しないままであれば、悩みは悩みのままで自分の得意分野とも比較のしようがなく、いつまでたっても解決の糸口をつかむことができない。数量化は悩み解決の近道なのである。