河合純一『夢 追いかけて』(ひくまの出版 2000)を読む。
バルセロナ、アトランタ、シドニーのパラリンピックに出場した日本第一人者の全盲のスイマーの著者が、大学卒業後静岡の中学校の新米教師として教壇に立つ奮闘記である。表題の通り、中学生向けに「夢は現実にしてこそ夢」と熱意を持ち続けることと努力の大切さを伝える。
日本では「スポーツ」は文科省の管轄なのに、「障害者スポーツ」は厚労省の管轄下にあり、盲学校、養護学校、聾学校の部活は文科省の管轄だが、卒業後は厚労省の管轄でルールが異なってしまうこともあるという。そのためオリンピックとパラリンピックの選手が同じプールで泳ぐということはほとんどない。作者は「障害を持っていない人たちは、パラリンピックをスポーツとは別物と考えがちで、パラリンピックの選手は日本の代表というよりも、日本の障害者の代表という意識が強くなりやすい」と述べる。同じ水泳というスポーツの中でことさら外形的な区分を設けることには肯定できない。
しかし、オリンピックも同様であるが、パラリンピック選手がなぜ日本を代表しなければいけないのか。「日本国家」の象徴が天皇制のもと、「五体満足」な「健全」なファミリーという「あるべき姿」と規定されている以上、そうした国家論に乗っかること自体に欺瞞が生じてしまうだろう。
『夢 追いかけて』
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