田尾雅夫『会社人間はどこへいく』(中公新書1998)を読む。
組織分析や経営管理論を専攻している著者ならではの日本の会社人間なるものの的確な分析がなされている。
組織の経営管理としては、勝手に働く上澄みと下に沈んだ沈殿槽だけに二分化してはいけない。働き蜂は、2割の優秀な蜂と、2割の怠慢な蜂と、そして6割の中間層で構成されている。しかし下の怠慢な2割の蜂を間引いても、残りの8割の中から更に下の2割が働かなくなるという有名な研究がある。著者はその6割の中間層が一番会社への忠誠心が強いことに着目し、中間層を会社にすがるしかない生き方を強い、会社人間に仕立て上げることが、会社にとって好都合であると説く。
また尾高邦雄氏の一連の研究(『日本の経営』中央公論社)による会社への帰属と組合への帰属の研究が興味深かった。それは会社員の企業と組合に関する帰属は対立するものではなく、両立的、または重層的であるとの見方であり、労働組合の一員でありながら、企業の従業員として、熱心に企業のために働くという現実主義的態度にその後の高度成長期における企業発展のバネともいうべきダイナミズムを読み取ることが出来るのだ。