日別アーカイブ: 2003年1月24日

『アトピービジネス』

二冊目は金沢大学医学部皮膚科教授竹原和彦『アトピービジネス』(文春新書 2000)である。
今もって原因の特定出来ていないアトピー性皮膚炎に苦しむ患者を食い物にする民間療法に対する批判の本である。ここ近年、アトピーの症状を抑えるステロイドが悪魔の薬であるかのようにマスコミで喧伝されているが、皮膚科医に対する悪宣伝や薬事法ぎりぎりのダークゾーンで商売する民間業者が跳梁跋扈している。そしてその商法は霊感商法のそれと酷似している。アトピーは一生治らず、ステロイド外用薬治療では症状は悪化するだけで、特殊な治療でしか治せないと脅し、患者の弱みにつけこむ阿漕な商売である。科学的な裏付けよりもまやかし的な商法に流れていく日本人の姿を的確に象徴していた。

『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』

まったく分野が異なるのだが、日本の近代化、現代の縮図が見えてくるような本を読んだ。

一冊目は井上宏生『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』(平凡社新書 2000)である。
文明開化以降に輸入され、カレーうどんやらカレーパンやらに派生し徐々に日本化されてきたカレーライスの普及を日本の近代化の歴史とともに精緻に分析している本である。もともとインド原産のカレーだが、イギリス経由で伝わったからこそ日本で爆発的に普及したのだと指摘する視点は鋭い。そこに日本人の欧米志向とアジア無視の潮流があるというのだ。後半のハウス食品やエスビー食品、江崎グリコの社名の由来にまつわる話は興味深かった。それにしても、カレーうどんの発祥が早稲田にある「三朝庵」だという話は眉唾ものである。