安達忠夫『母と子の漢文語感教育法』(創教出版 1989)を読む。
最近重きを置かれることのない「素読」の簡単な入門書である。
中でも作者は幼児期に日本語の根幹となる漢文を漢音で素読することが語学能力を向上させると述べる。確かに作者のいう通り、完全なる理解を求める昨今のゆとり教育の流れには反するが、理解が追い付かないまでも「門前の小僧習わぬ経を読む」といった習慣は勉強に限らず運動でも大切なことである。「習う」と書いたが、作者の説によれば「習」という字の「白」という字形には「重ねる」という意味があり、全体で巣立ちの前のひなが何度も羽を動かして飛ぼうとする動作を示すということだ。私自身もそうであるが、速読やポイント理解に偏り過ぎてしまうのも「教育」という観点からは考えものであろう。
また漢文教育についても、書き下し文と現代語訳をくらべながら文法事項を確認するだけの従来の漢文教育の限界は20年以上前から指摘されている。素読と視聴覚映像をうまく組み合わせて広く中国文化圏の理解というレベルで伝達できるような勉強が大切である。