まったく分野が異なるのだが、日本の近代化、現代の縮図が見えてくるような本を読んだ。
一冊目は井上宏生『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』(平凡社新書 2000)である。
文明開化以降に輸入され、カレーうどんやらカレーパンやらに派生し徐々に日本化されてきたカレーライスの普及を日本の近代化の歴史とともに精緻に分析している本である。もともとインド原産のカレーだが、イギリス経由で伝わったからこそ日本で爆発的に普及したのだと指摘する視点は鋭い。そこに日本人の欧米志向とアジア無視の潮流があるというのだ。後半のハウス食品やエスビー食品、江崎グリコの社名の由来にまつわる話は興味深かった。それにしても、カレーうどんの発祥が早稲田にある「三朝庵」だという話は眉唾ものである。