日別アーカイブ: 2002年3月27日

暴走族追放条例

本日広島で「暴走族追放条例」が可決された。
「条例案は禁止行為として、公共の場で許可を得ず、公衆に不安や 恐怖を与えるような集会などを挙げて」おり、「暴走族の背後に控える 「面倒見」の存在を念頭に、集会の指示・命令も禁止した。さらに、市が管理する公共の場で、暴走族が特異な服装で円陣を組み、旗を立てるなどし、市長の中止・退去命令に従わない場合、六月以下の懲役または十万円以下の罰金を科す」という。

この記事を読む限りではこの条例は拡大解釈がいくらでも可能な悪法である。そもそも「暴走族」という語からして定義は曖昧である。「警察24時」的なドキュメンタリー番組で報道されている「暴走族」のイメージを想起しがちであるが、辞書には「グループでオートバイや自動車を乗り回し,他人に迷惑をかける者たち」としか載っていない。また「特異な服装で円陣を組み、旗を立てるなど」の行為とあるが、運用を誤れば様々な団体に適用が可能である。この条例は憲法に定められた表現・集会の自由を侵害している。詳しい情報が入手出来ないのが残念であるが、破防法に似た恐ろしい法案である。

『ソウルミュージック ラバーズオンリー』

第97回直木賞受賞作、山田詠美『ソウルミュージック ラバーズオンリー』(角川文庫 1987)を読む。
彼女の初期の頃の作品であるが、体の結びつきを武器にする男女のすれ違いがテンポよく描かれていた。セックスを愛情表現として捉えるのか、性欲行為として捉えるかといったもどかしさが底流に流れるようなステレオタイプな恋愛小説ではない。セックスは男性にとって征服欲を満たすものであるが、同時に女性にとっても支配欲を満たすものである。女性にとっての支配欲といったものがどこに依拠するのかという問題は単に性欲だけの問題ではない。女性を巡る様々な社会状況に帰していく問題である。
しかし山田詠美さんはそこまではっきりとは述べない。男の征服欲を飲み込んでいくだけの女の「存在感」をひたすら示すだけである。安易な捉え方をするならば女版寺山修司といったところか。