高橋和巳「孤立無縁の思想」(旺文社文庫)を図書館から借りてきて現在読んでいる。
民主主義の原則に従って、「生活実感のレベル」から生活をより良くしていくために直接行動に訴えていく彼のスタイルは、当時のノンセクトの学生から絶大な支持をあおいだ。しかし新潟の住民投票や、日の出のごみ処理施設の反対行動に代表されるような住民運動が息をふきかえしつつある今こそ読まれなければならないのではないか。
月別アーカイブ: 2000年11月
『松本』
松本人志『松本』を読んだ。
うっちゃんなんちゃんと組んだ「夢で会えたら」という番組が確か12年ほど前に放映されていたと記憶するが、それから10年以上お笑いのトップにいるというのはどうであれすごいことだ。
『種族同盟』
松本清張他『種族同盟』(光談社文庫)を読んだ。
つまらなかった。
『日光殺人事件』
内田康夫『日光殺人事件』を読んだ。
おなじみの私立探偵浅見光彦が活躍するシリーズであるが、ここまで定番になると「水戸黄門」との類似を指摘せざるを得ない。徳川幕府をバックに悪者を退治する水戸光圀と、刑事局長の兄を持つ浅見光彦が難事件を解決する姿は多くの点で重なる。また主人公が権力の中枢ではなく、単なるじじい、またルポライターを装いながらも絶大なる権力の力を秘め隠す日本人が好みそうな振る舞いも共通する。浅見光彦にいたっては、警察に批判的な言動を振りまきながらも、警察権力の持つ力を印籠のごとく最大限活用している。悪く言えば、彼らの活躍が支持されることで「良心的」な保守層が形成されていく危険性すら感じる。ちょうど今話題になっている自民党の加藤元幹事長を讚えるようなタイプだ。悪しき権力内批判層の形成にこれらの作品群が大きな影響力を持つ危なさをひしひしと感じている。
上記のような草の根右派言説に批判的な視座を設けなくてはならない点については、11月18日付けの『図書新聞 2510号』の太田昌国のインタビュー記事「日本ナショナリズムを解体する」を読みながら考えたことだ。この記事の中で太田氏は「左翼的・進歩主義的な思想と運動の後退局面を捉えて、非常に居丈高な、それ見たことかと揶揄するような右派言論が台頭してきた。ソ連の崩壊を見届けた後のことです。(中略)たしかに、戦後左翼的・進歩派の、いままで当たり前のように僕らが読み過ごしてきた言論のなかに、明らかに現在の右翼ナショナリズムの跋扈と通底する、同じ理論装置や歴史観が孕まれていた」と述べている。小林よしのりや西部らは当初は「戦後民主主義」なるものを攻撃していた点を我々は想起しなくてはならないだろう。
『小論文作法』『酒井の小論文《思索の森へ》』
少しゆっくりできる日が続いたので本を読む時間を取ることが出来た。小論文指導をしているので、小論文関連の参考書を読んだ。
鷲田小弥太『小論文作法』(三一新書)はテーマから結論の導き方について他の参考書にはない「論拠」の示し方が詳述されていて分かりやすかった。
酒井敏行『酒井の小論文《思索の森へ》』(代々木ライブラリー)は参考書というよりも一つの読み物として面白かった。
ただ受験参考書としては異色な代物だ。このなかで著者酒井は結論のまとめ方について高橋哲哉の『戦後責任論』を挙げて、「自分の意見をきめるためにはどうしても『責任』を持たなければならない」と述べ、「主体化」を重視している。個人的には好感の持てるくだりであるが、指導する立場でどこまで徹底できるかは難しい点だ。