山崎貴監督・脚本、神木隆之介主演『ゴジラ-1.0』(2023 東宝)を観に行った。
もちろん、物語の中心はゴジラが東京湾に出現するパニック映画であるが、太平洋戦争での特攻隊員の任務から逃げ出したトラウマに悩む青年の成長の物語ともなっている。不覚にも涙が少し零れた。過去にどれほどの失態を犯そうとも、まずは生き延びること、生きることこそが過去と正面切って向き合う唯一の方法だと教えてくれる。
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『福田村事件』
春日部イオンで、森達也監督『福田村事件』(2023 太秦)を観た。
久しぶりにいい映画を観た感慨にふけった。
1923年9月に発生した関東大震災において、「朝鮮人が毒を巻いている」などの流言・飛語が飛び交い、朝鮮人や中国人、社会主義者ら6000人が殺害されている。千葉県福田村(現野田市)でも、香川県の行商人10人が朝鮮人と疑われ、自警団によって殺害されるという事件が発生した。この映画は、歴史の闇に埋もれていた福田村の殺害事件を真正面から取り上げている。
また、多数決主義に陥ってしまった大正デモクラシーの負の側面や、三一独立運動、1922年に発表された水平社宣言など、当時の日本の社会問題にもしっかりと触れられており、高校生に是非見せたい映画であった。
当初森達也監督が映画会社を回ったところ、どこも取り上げてくれなかったそうである。そこでクラウドファンディングで制作費を募ったところ、予想を超える額が集まった。また、出演してくれる俳優がいないのではという懸念があったが、どの俳優も即答で出演してくれたとのこと。
こうした日本の暗部に切り込んでいく映画が、観衆の力でヒットするというのは素晴らしいことである。
『君たちはどう生きるか』
『パリタクシー』
埼玉新都心で、クリスチャン・カリオン脚本・監督『パリタクシー(原題:Une belle course)』(2022 仏)を観に行った。
中年タクシー運転手が高齢女性の客を自宅から老人ホームまで運ぶ1日を描く。パリの観光名所や女性の過去の思い出の場所を辿りながら、女性の口から波乱に満ちた人生が語られる。現在と過去のドラマを通じて、女性は過去の生き方に満足を感じ、運転手はこれからの生き方に自信を得るという極めて文学的な作品となっている。話は単純だが、印象に残る作品であった。
ダニー・ブーンがタクシー運転手シャルルを、フランスの国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノーが客のマドレーヌを演じる。
2日前に公開されたハリウッド映画『ワイルドスピード』目当ての観客が多かった。先月から公開され、一日に1回のみの上映となった本作とは、同じ車の運転手の映画であったが、極めて対照的であった。『パリ〜』の方は観客も高齢で、ぱっと見、50代以上の人しかいなかった。





