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パンフレット研究:青森公立大学

1993年に、経営経済学部経営経済学科を擁する大学として設置され、1997年に修士課程、2007年には博士課程まで設置されている。現在では「経営学科」「経済学科」「地域みらい学科」の3学科で構成されている。

北東北という地域性のため、第2外国語ではロシア語、韓国語、中国語の3言語がある。その中で、唯一ロシア語のみ正規のロシア人の准教授もおり、4年時まで授業が置かれている。

しかし、果たして人口30万人の青森市が博士課程まで設置されている大学を運営していけるのであろうか。おそらくは国立弘前大学が人文、教育、医、理工、農学部の5学部しか設置していないため、穴を埋める形で経済経営系の大学が企画されたのであろう。1980年代後半の財政バブル、受験バブルも後押ししたのかもしれない。ただ、今後、青森市の郊外で経済経営系の単科大学では先行きが心配される。邪推であるが、原発マネーが入ってやっとこさっとこの運営なのかもしれない。

青森と弘前は特急で一本なので、弘前大学との遠い先の合併を見据えた連携という道を歩んだ方がよいであろう。理系の単科大学であれば就職含め需要はあるが、文系の単科大学、しかも大学院まで設置してしまってはフレキシブルな改革も難しいであろう。

学長自ら「大学進学は、4年の時間と多額の費用を要する、大きな投資です。高校生の皆さんは、その見返りとして何を求めますか。青森公立大学は、就職や資格取得のための予備校ではありません。本学は、不透明な現代社会にあって、自分の力で力強く生き抜いて行ける、自律した若者を厳しく育てたいと願っています。皆さん自身の進学目的を今一度反芻し、本学の『良さ』を知ってください。」と述べている。そうした危機感を煽らねばならないほど、学生の勉学に対する意識が低いのであろうか。公立の大学なのに推薦入試では1.1倍という低倍率である。ただ学費が安いというだけで選ぶ大学となっているのであろう。

パンフレット研究:高知工科大学

高知工科大学のパンフレットを読む。
「日本にない大学。」を売りにし、1997年に公設民営大学のさきがけとして誕生した新しい大学である。しかし地方の工学系の私立大学ということで2006年に定員割れを起こしている。その後2008年にマネジメント学部(経営学部と同じ)が設置され、さらに2009年には公立大学として新たに出発し、工学部をシステム工学群、環境理工学群、情報学群の3学群13専攻に再編している。公立大学の恩恵で2012年入試では全国から受験生が集まり、一般入試で4倍近い競争率をたたき出している。推薦入試は高知県内枠が半数以上を占めるためか、倍率が1倍台に留まっている。

システム工学群は機械工学専攻、ロボット工学専攻、航空宇宙工学専攻、電子工学専攻、光エレクトロニクス専攻、建築・都市デザイン専攻の6専攻。環境理工学群は化学・生命科学専攻、ナノ・物質科学専攻、環境科学専攻の3専攻。情報学群は情報と人間専攻、情報とメディア専攻、情報通信専攻、コンピュータサイエンス専攻の4専攻で構成されている。また全科目選択制が取られ、必修科目がないため、幅広く基礎工学を学ぼうとする学生には面白い大学である。

最先端の研究というわけにはいかないであろうが、一通りの専攻が揃っており、基礎分野に強い学者が集められ、学ぶ環境は整っているようだ。就職状況も良く、西日本を中心とした中堅・大手の企業に数多く就職している。

残念ながら文系のマネジメント学部は、凡庸な女子大学の経営学部レベルの陣容である。一方、工学系の方は、ロボットや宇宙、生命科学やナノまで揃っているので、金と時間があれば、今から私が学んでみたい大学である。

『SELF BRAND:出身大学を決めろ!』

本屋で無料で配布している、『SELF BRAND:出身大学を決めろ!』(FROMPAGE監修 2012)という大学案内の広報誌を読んだ。国公立私立を問わず、大学のキャッチコピーがその大学の立ち位置をよく表していると感じた。広告のページの一番大きい文字の文句を並べてみたい。

東京大学:「世界を担う知の拠点」へ
京都大学:自問自答 The answers are within you.
明治大学:世界へー「個」を強め、世界をつなぎ、未来へー
名古屋大学:世界が求める勇気ある知識人を育てます。
中京大学:ここから世界へ
大阪医科大学:80余年の伝統と、革新の医学教育環境。
立命館大学:自分を超える、未来をつくる。
立命館アジア太平洋大学:私たちの力で平和な未来を 世界中から集った教員 ・学生と学ぶキャンパス
上智大学・南山大学:カトリックが結ぶ半世紀の絆。
名城大学:穏健中正
常葉大学:つながる、ひろがる、つくりだす。
早稲田大学:日本の早稲田から、世界のWASEDAへ
専修大学:次に繋ぐもの 新たな歴史の創造をめざして
駒澤大学:人は、人から学ぶ。
東京理科大学:CONSCIENCE−科学は良心へ向かう。
中央大学:実学と叡智を兼ね備えた「行動する知性」を育成。
神戸大学:真摯・自由・協同
甲南大学:どこにでも ありそうだけど ここにしかない
神奈川大学:約束します、成長力。−成長支援第一主義−
関東学院大学:横浜へ進路をとれ。
日本大学:多彩な学び 多彩な翼
北海学園大学:北の大地に127年の歴史。
千歳科学技術大学:未来を創る科学を学ぶ。
岩手医科大学:医療人たる前に誠の人間たれ
東北工業大学:創造から統合へ。
茨城大学:知的好奇心をもって挑戦しよう。
白鴎大学:空には、さえぎるものはない。
埼玉県立大学:ゆとりとチャンスに満ちた21世紀のフロンティア、埼玉で学ぼう
埼玉大学:日本の未来、世界の舞台へ翔こう!
女子栄養大学:管理栄養士国家試験合格者数226名 合格率100% やっぱり女子栄養大学です。
城西国際大学:8学部の総合大学
青山学院大学:2013年青学の新たな歴史が始まります。
國學院大學:2つで1つの未来 SHIBUYA+YOKOHAMA=KOKUGAKUIN Univ
首都大学東京:考えるとは
東京工科大学:東京工科大学は、「実学主義」を掲げています。
東京家政大学:専門職に強い 職業人養成131年
東京農業大学:緑と生命を科学する
法政大学:大内兵衛と論語
新潟大学:新潟大学が育むのは「人財」です。
富山県立大学:夢見るだけじゃ終われない・“現在の不可能を未来の可能に”それが「工学心」。
山梨学院大学:個性を育み、個性を磨く未来型キャンパス
静岡県立大学:個を拓き、強い絆で知を発信
愛知医科大学:人が中心の医学教育に取り組んでいます。
愛知工業大学:四年後、君はきっともっと強くなっている。
愛知淑徳大学:次代を生き抜く力を育む
藤田保健衛生大学:獨創一理
滋賀大学:素顔で学ぶ。素直に生きる。
京都外語大学:言語を通して世界の平和を
京都産業大学:京都に、ひとつ
龍谷大学:これからも、共に生きる。
大阪学院大学:実学を究める総合大学 就職サポートも充実!
関西福祉科学大学:人の幸せを願う こころで 福祉科学を学ぼう
森ノ宮医療大学:WE love 森
福山市立大学:知は明日を開く
西南学院大学:「人間愛」を育みながら、世界へ、未来へ。
長崎県立大学:未来力
熊本学園大学:熊本学園は創立70周年を迎えました。
崇城大学:大学でパイロットになるということ
横浜市立大学:教養を身につけ、国際性を磨く。
慶応義塾大学:慶応義塾は、すべての人に開かれている
東京農工大学:地球をまわそう
金城学院大学:女性の人生を豊かにする大学は、就職に強い。
日本女子大学:あたらしいあなたをみつける大学
一橋大学:知と業(わざ)のフロンティア
福岡教育大学:夢が叶って先生になりました。
久留米大学:自由と自律が“想い”を実現する。
九州大学:知の新世紀を拓く
福岡大学:手にしたい夢がある。
関西大学:社会を見つめ、変化に挑む。「考動」する関大人が世界を拓く。
関西医科大学:2013年関西医大が変わる

こう並べてみると、横綱の東京大学が「知の拠点」と宣伝しているが、それに符号するかのように京都大学が「自問自答」、一橋大学が「知と業」、中央大学が「行動する知性」と称しているところが面白い。押し並べて地域の拠点校となるべき公立大学がやたら「世界」や「国際」「未来」といった空疎な宣伝文句が並び、マーケティング戦略が外れている気がする。また、ワースト1は、母校で残念なのだが、早稲田大学の「日本の早稲田から、世界のWASEDAへ」であろう。もう少ししゃれた文句は考えつかなったのであろうか。

パンフレット研究:大学コンソーシアム京都

財団法人大学コンソーシアム京都のパンフレットを読む。
京都地域を中心とした約50の大学・短大の単位互換制度を始め、図書館共通閲覧システムやインターンシップ、また学生交流事業として「京都学生祭典」や「京都国際学生映画祭」などを手がける。受験生集めや地域の活性化などを目論見、京都の企業や京都府 や京都市も絡んだ一大プロジェクトである。京都全体が一つのキャンパスであると、単位互換制度に力を注いでいるものの、京都精華大学の「現代音楽論」や京都産業大学の「京都地名探訪」などカルチャー講座の域を出ない科目が多い。また加盟大学の中には、受験生集めに苦労している大学や東京の大学も名を連ねており、総花的な形態となっているのは否めない。

パンフレット研究:帝京平成大学

帝京平成大学のパンフレットを読む。
主なキャンパスは池袋であり、2013年に中野キャンパスの開設が予定されている。パンフレットでは「健康・医療・福祉・教育・情報の総合大学」であると謳われている。そのキャッチコピー通り、薬学部、看護、はり灸、柔道整復学科からなるヒューマンケア学部、栄養や理学療法などの健康メディカル学部、そして、教育や社会福祉、経営やレジャー、スポーツなどごっちゃまぜの現代ライフ学部からなる。さらに千葉にキャンパスを設け、柔道整復や理学療法、医療スポーツなどからなる地域医療学部が2008年に開設されている。同じ大学なのに、キャンパスの違いで似たような学科が重複しており、非常に分かりづらい。元々は1986年に設立された情報学部のみの帝京技術科学大学が母胎であり、1995年に帝京平成大学に名前を変えてから、資格や就職に比較的強い医療福祉系の学科を寄せ集めている。同じ学部なのにキャンパスが異なるなど、大学全体の一体感は皆無であろう。

また入試も青田買いでおかしなものになってしまっている。例えば平成22年度の健康メディカル学部健康栄養学科の入試では、AO入試で募集定員27名のところ、258名が受験し合格者は42名、推薦入試では定員8名のところ、58名が受験し合格者は35名と、定員を無視して合格を乱発している。一方で、一般入試は募集35名のところ、114名が受験して合格者は22名、センター利用入試では7名の定員に対して72名が受験したにも関わらず、7名しか合格者を出していない。他の学科も軒並みAO入試や推薦入試でかき集めている状況だ。これでは高校側も一般入試に生徒の目を向けさせられないだろう。

さらに学費の「月払い制度」があり、奨学金が振り込まれる口座から帝京平成大学の口座に定期的に自動送金されるという「親切丁寧」な制度が導入されている。
本体の帝京大学の補完的な大学なので、サークル活動やクラブ活動も低調で、「大学」という名のついた専門学校の域を出るものではない。