市古貞次校注・鴨長明『方丈記』(岩波文庫 1989)を読む。
冬休みで時間があったので、長らく本棚に眠っていた本を引っ張りだしてきた。近いうちに家の購入を検討している私に、ハッとさせる文章があった。
惣て世の人のすみかを作るならひ、必ずしも事(自分)の為にせず。或いは妻子、眷属(親族)の為に作り、或いは親昵、朋友の為に作る。或いは主君、師匠及び、財宝のためにさへこれを作る。われ今、身の為にむすべり、人の為に作らず。
鴨長明は自身の生活の基本は住処であるとし、その住処を自分以外の人の為に作るというのは、自身のアイデンティティの喪失にもつながりかねないと述べている。たとえ狭くてもボロくても、自分だけの空間を拵えるというのは大切であると感じた。