中野翠『ウテナさん祝電です』(新潮文庫 1990)を読んだ。
「ブス」というものをキーワードにした楽しいエッセーなのであるが、深読みすれば、社会的弱者である女性、とりわけ美醜の差別を受ける不美人に焦点をあてることで、人間の持つ差別感情が根強いものであるということを訴えた作品だと解釈することもできる。彼女は次のように述べる。
いうまでもなく人生は不公平なのだ。美人もいればブスもいる。美男もいればブオトコもいる。もし世界が貧富の差のない平等社会になったとしても、やっぱり美醜の差は残るだろう。そうなったら、他の面(経済的、政治的な面)で平等なだけに、美醜の不平等がきわだって目立つことになり、ブスやブオトコにとっては、いっそう悲惨な状況ということになるだろう。