『結婚しません。』

遥洋子『結婚しません。』(講談社 2000)を読む。
『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』の著者であり,マルクス主義フェミニズムの立場から家父長制と資本制によって女性を縛り付ける家族制度について疑義を挟む。
前作が上野千鶴子さんによって「東大幻想を強化してしまった」との評価を与えられたことから,一転して一人の娘の立場から母親,義姉を取り巻く「家族の愛が一番」といった主婦イデオロギーの構造を暴こうとする。
ロランバルトの「あることが知られるためには,それが言わなければならぬのだ。そして,ひとたびそれが言われたならば,たとえ一時的にしろ,それが真実なのである」(『恋愛のディスクール・断章』)という言葉を引用しながら,「家族」,「良妻賢母」,「愛」が極めて国家的な男性による女性支配戦略のベクトル上に作られたものであると断言する。男と女の依拠する立場を,仕事か家庭かと単純な2つのモデルでのみ語っている点が気になったが,得てして大上段に構えがちなフェミニズムを生活の中から論じようとする試みは評価できるであろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください