『カネと自由と中国人』

森田靖郎『カネと自由と中国人:ポスト天安門世代の価値観』(PHP新書 2001)を読む。
中国というととかく4000年の伝統と、自転車の行き交う紫禁城前で太極拳を行っている姿が脳裏に浮かんでしまうが、そうした幻想を根本からぶち壊される本であった。先日石原都知事が「中国人は無知だからアイヤーと叫んでいる」、松沢神奈川県知事が「外国人はみんなコソ泥だ。石原都知事が取り締まって神奈川県に流れ込んで来ている」と発言し、政治レベルで日本における長期不況に対する不満のはけ口として、不法滞在・不法就労者を犯罪者と同一視し排斥しようとする見方が強まっている。

しかし中国本土での「先富論」による沿岸部と農村部の経済格差や、上海出身者と福建出身者の日本での住み分けなど、現状をきちんと分析していくことで実態が見えてくる。日本政府が「専門技術職の外国人以外は受け入れたくない」という1960年代からの方針を堅持し、外国人労働者を締め出してきた(ドイツの9分の1)ために、蛇頭や工頭などによる密航ビジネスが生まれ、それが暴力団の資金源になっている。また日本にやってくる労働者自身も多額の借金を背負うために、犯罪や金銭トラブルを抱えてしまうと著者は現状を分析する。そこでそうした分析を踏まえ、出稼ぎ目的の外国人労働者のすべてに一定期間日本社会に適応するかどうかを判断するために、労働許可を与えてはどうかと主張している。

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