『だれが「本」を殺すのか』

佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』(プレジデント社 2001)を読む。
単行本で460頁ぎっしり書かれた本で、ひさびさに数日、時間にして10時間くらいかけて読み終えた。かなりの疲労感が残る本であった。著者という最も川上にいる存在が生み出したテキストが、編集者と出版社の手で加工され、取り次ぎを経て書店に並び、「本」という名の商品として読者に消費されるまでの全プロセスを一つあまさず描き、「本」の世界を取り巻く状況の全てを綿密な取材のもと露にした力作である。本離れの原因とされてきた問題は、これまで大型書店の進出に伴う中小店の減少や、取り次ぎの寡占、ブックオフなどの大型新古書店の拡大、図書館の影響などさまざま個別に論じられてきた。しかし佐野氏はそうした本離れを引き起こした真犯人を追いつめようと取材を重ねていくが、結局犯人像ははっきりしない。もしかしたら読者を含めた関係者全員が犯人であるのかもしれない。「本」の世界に関わる人間にとって現状を知るための必読の書であろう。しかし読んだからといって救いがもたらされる訳ではないが。。。

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