大友克洋監督アニメ『スチームボーイ』(2004 東宝)を観に行った。
産業革命勃興期にいち早く工業化を果たし、「世界の工場」の座に着いたの19世紀のイギリス、ロンドンが舞台である。スティーブンソンによる蒸気機関車の発明によりアジア・アフリカの植民地化が加速化し、「科学」やら「国家」「文明」なるものに振り回され、第一次世界大戦によって破壊されていくヨーロッパの雰囲気をうまくどたばた調に描いている。国家を独占資本企業が支配していく帝国主義の発達の萌芽をロンドン万国博覧会に織り交ぜながら、ロバート・オーウェンが指摘したような工場労働者の過酷な労働環境の改善を訴える人物や、二枚舌外交を演じたロスチャイルド家のマーク・サイクスに似たような人物までも出てきて、時代考証はびっくりするくらい丁寧に出来ている。しかし芸術のような絵、壮大な音楽に比して、人形のような登場人物が舞台設定に対してあまりに緊迫感のないセリフを口にする。また物語世界の中では数週間ちかくの時間が経っているはずなのに、人物像の描き込みが少ないため、その時間の流れが感じられず、薄っぺらな内容になってしまっている。また宮崎駿の『天空の城ラピュタ』を彷彿させるようなシーンやセリフが多かったのも興ざめだ。部分部分のアクションシーンなどはアニメとCGの合成により迫力満点なのに、完璧を求めすぎたのか、全体の流れが淀んでしまったような内容になってしまったのは残念だ。
『スチームボーイ』
コメントを残す