女による女のための第2回「R‐18文学賞」読者賞受賞作、渡辺やよい『そして俺は途方に暮れる』(2004 双葉社)を読む。
女性向けの官能小説であり、過激なセックスシーンが続く。しかし、男性目線のエロ小説と異なり女性視点で書かれているためか、過激ではあるが恋愛における心模様がベースになっている。印象に残ったシーンを引用してみたい。自分が満たされ愛されている確認事項としてのセックスを蔑ろにする男性への恨みつらみが述べられ、女性の怖さを感じる表現が続く。
わたしは、暗い部屋の中にしばらくぼんやり立っていた。脚が震えてぺったりと部屋の真ん中に座り込んだ。心臓のばくばくいう音と自分のふうふういう荒い息が聞こえる。
「あああああああああ」
自分が号泣していると気が付いたのは随分たってからだ。あああ、寂しい寂しい寂しい。私のぽっかり空いたおまんこを埋めてくれるおちんちんがもうない。苦しい苦しい。誰が満たしてくれる。私を飢えさせ私を濡らしわたしをイカせてわたしをこんなふうに咆哮させるのはあの男しかいない。
そうだ、殺しておけば良かった。こんなすさまじい空漠が待っていると知っていたら、彼を殺しておけば良かった。そうして彼の肉が少しずつ腐るにまかせ、そのそばで思い切りオナニーするのだ。もう男はどこにも行かない。わたしの悦楽を見届けてくれる。やがて骨になり、どこかに飛び散ってしまって完全に彼の肉体が失せたら、わたしも死ぬのだ。そうだそうすれば良かった。