『アメリカの論理』

 吉崎達彦『アメリカの論理』(新潮新書 2003)を読む。
 イラク戦争開戦前夜に至る米国とりわけ共和党内のパワーバランスについて分かりやすく解説されている。先日コリン・パウエル国務長官が辞任したが、日本人にとっては分かりにくい動きであった。しかし民主党寄りでアラファトとも親交が深かったのではと噂される穏健派のパウエル氏と、ネオコンの巣窟である共和党の政策シンクタンク「PNAC:新しいアメリカの世紀のための計画」とを対置して考えると、ブッシュの更なる右旋回の体制構築が見えてくる。パウエル氏の政権からの排除も頷ける。この「PNAC」には、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウォルフォビッツ国防副長官など、現ブッシュ政権を支えるタカ派の人脈が名を連ねている。今後ますますアメリカ国内においてWASP主流の保守的な勢力が先鋭化し、アメリカ的価値観によって世界政治が突き動かされていく状況が、今回の選挙後の流れからかいま見えてくる。

ちなみに、この「PNAC」のホームページの政策宣言には次のように述べられている。

 Our aim is to remind Americans of these lessons and to draw their consequences for today. Here are four consequences:
・ we need to increase defense spending significantly if we are to carry out our global responsibilities today and modernize our armed forces for the future;
・ we need to strengthen our ties to democratic allies and to challenge regimes hostile to our interests and values;
・ we need to promote the cause of political and economic freedom abroad;
・ we need to accept responsibility for America’s unique role in preserving and extending an international order friendly to our security, our prosperity, and our principles.

 つまり、アメリカとその同盟国を脅かすものは、国際社会の敵であり、アメリカは国際社会に対し重大な責任を負っているのであり、自由と民主主義を世界に拡げていくためには、軍事的な力を背景とした体制構築が必要であるとの認識である。
 アメリカ「独自な」正義感に裏付けされた武力政治であり、『ドラえもん』の登場人物ジャイアンのような理論武装である。アメリカをジャイアンに喩えると、イラクはのび太くんであり、ジャイアンの目の敵にされている。ヨーロッパはしずかちゃんであり、現実の武力の前にはジャイアンの意識するところではない。はたして日本はいつまでスネオの役を演じ続けるのだろうか。

 詳細は筆者のホームページ(溜池通信)を参照されたい。

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