『悪い夏』

child20070701

倉橋由美子『悪い夏』(角川文庫 1970)を読む。
古本特有のぷーんとした匂いが漂う文庫本で、ページを繰る度に表紙が切れたり、ページが千切れたり本が崩れていった。思い返すに大学のサークル部室の本棚に長年眠っていた本を持ち帰ったものである。それゆえ傷みも激しいのであろう。
作者の20代の頃の短編が収録されているのだが、作者の肥大化した内面世界を描く支離滅裂な展開が多く、作品の主題が掴みきれなかった。作者は、何事にも物憂げな登場人物をして、学生運動やサラリーマン生活に翻弄される人たちにシニカルな言葉を投げつける。しかし、そのアンチとしての作者のテーマが見えてこない。

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