林信吾『しのびよる階級社会:”イギリス化”する日本の格差』(平凡社新書 2005)を読む。
著者は、10年に亙る英国での生活を踏まえ、厳然たる階級格差に根ざしたイギリス人の生活、経済、教育制度を分かりやすく述べる。米国には人種差別があるが、イギリスには人種「区別」があると巷間言われる。イギリスでは、言葉や生活スタイル、趣味、義務教育など多くの場面で、上流階級と労働者階級には大きな隔たりがある。
著者は、英国の一部を知っただけで英国のありようそのものを礼賛する一部の学者の悪影響で、日本にも公教育制度を契機として生まれながらにして人生が決定されてしまう新たな階級制度が根付いてしまうことを危惧する。
著者は次のように述べる。
1990年代より、「ゆとり教育」なる美名のもとに、「見えない三分岐システム」のごときものが生み出されてきた。
- くどいようだが、確認しておくと、義務教育段階から私立校に通うエリート層
- 公立校の、ごく一部の秀才組
- 公立校の「その他大勢」組
……という具合に振り分けられつつあるのだと考えてよい。