『日本の山を殺すな:破壊されゆく山岳環境』

石川徹也『日本の山を殺すな:破壊されゆく山岳環境』(宝島新書 1999)を読む。
先日内山節氏の森林ボランティアに関する記事を読み、日本の森の状況が知りたいと思い手に取ってみた。黒部や上高地、、日高山脈、白神山地、沖縄・やんばるの森など、日本各地の森林破壊の現場を実際に歩き、現地で感じた疑問や行政に対する憤りが述べられている。
生態系を無視した開発と自然保護運動との葛藤が中心的なテーマなのだが、開発か保全かという単純な色分けはできない。例えば白神山地は世界遺産に登録されたので、開発の手からは逃れたのだが、登録された途端に、生態系保護のために地元住民すら立ち入りを禁止されてしまった。また、観光客の安全を守るために、護岸工事や林道整備が行われ、観光客が増えれば増えるほど観光の目玉である景観が壊されていくという皮肉な例もある。
著者は開発サイドからも自然保護運動からも一歩距離を置きつつ、現場の自然や地理、生態系を踏まえて考えるべきだと提唱する。そして現場を見たことすらないのに開発をごり押しする霞ヶ関の役人を批判する。

地方から都市へという毛沢東的な運動論を彷彿させるというのは言い過ぎであろうか。

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