『いま生きているという冒険』

石川直樹『いま生きているという冒険』(理論社 2006)を読む。
北極から南極までカヌーや自転車を使った旅やチョモランマ到達熱気球太平洋横断など、漫画のようなわくわくするような冒険日記である。あまりにスケールが日常離れしていて、つかの間のストレスの解消となった。
著者の石川氏は、1977年生まれの冒険家で、現代版植村直己のような人である。公式ホームページを見ると、現在は人間の剥き出しの本質が現れる冒険そのものを研究テーマにしているようである。全く羨ましい人である。

 中米諸国を旅していて、地続きである北米との落差にぼくたちは愕然としました。(中略)現在の世界は、貧しい人々から豊かな人々へ富が流れるようにできています。貧しい人々がいない限り世界が成り立たないとすれば、先進国と呼ばれる国々の住人たちが声高に語る環境問題や平和で平等な世界とはいったい何なのでしょう。南北問題という言葉の意味は学校で習っても、その原因が自分たちにあることをぼく自身感じてきたでしょうか。アメリカや日本はどうしていつも戦争を肯定する側に立ち、弱者を欲し続けるのでしょう。
ペダルをこぎながら、僕の頭もぐるぐる回転していました。教科書で覚えた知識はテストが終わった瞬間に消えてしまっても、旅で感じた疑問は炭火のようにいつまでも熱を発し続けます。ぼくは今もこれからも、これらのことをずっと考え続けていくでしょう。

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