『食の世界』

菊地俊夫編著『食の世界:私たちの食を考える』(二宮書店,2002)を読む。
観光地理学者の菊地教授などの地理の研究者と、食品メーカーの技術担当者や、フランス料理、日本料理、中華料理の料理人の方が共同で執筆されている。大学の教科書のような装丁で、偏見を持って読み始めたのだが、大学教授の農業に関する地理学的な研究と、世界各地の食材を活かす料理人の経験が見事に符合していて、味のある著作となっている。
もともとは目黒区民のためのプロの料理人の料理を味わうことのできるオープンカレッジの企画として始まったものである。そこで配布された資料や受講生の質問に答えるための下調べが本書の元となっている。

主食の食材となるための基本的な条件は、毎年安定して大量に栽培できることが重要であり、それには一年生の作物が最も適している。次に、主食の食材として運搬が容易にでき、貯蔵性に優れていることである。小麦・米・トウモロコシは乾燥させた穀粒や袋や容器に詰めれば、どこにでも簡単に運ぶことができる。
主食となる穀物はデンプン質が主であり、タンパク質などの栄養素に欠けている点が短所である。そのため、穀物を補う形で畜産製品や豆類を組み合わせて食事を摂ることにより、栄養バランスを保つ工夫がなされている。

ジャポニカ米もインディカ米もインドのアッサム地方や中国の雲南地方を原産としている。ジャポニカ米は主に内陸で広がり、揚子江を経由して日本に伝わり、日本で品種改良がなされ、朝鮮半島や中国北東へ伝わっていった。インディカ米はその名の通り、インドを経由して、東南アジア各地へ拡がっていった。

小麦はシルクロードを通じて、中国北部へと伝わっていった。イタリアのスパゲティは、マルコポーロが13世紀に中国の麺の食文化を持ち帰ったのが始まりだと言われる。

ジャガイモはオランダ船がインドネシアのジャガトラ(現ジャカルタ)を経由して長崎にもたらされたことから、「ジャガタライモ」と呼ばれ、その短縮形の「ジャガイモ」が普及するようになった。現在でも日本のジャガイモの生産量は北海道に次いで、長崎が第2位となっている。また、明治期に入って、川田竜吉男爵がアメリカから北海道の気候に適したジャガイモを導入したため、「男爵イモ」という名称も普及している。

懐石料理とは、石を焼いて布に包み、これを懐に入れて暖をとった懐石に由来しており、温めた石を懐に抱いて一時の空腹を忘れる程度の質素で軽い食事を意味している。

関東の水はどちらかといえば硬水なので、昆布のうまみが出にくいので、鰹節を多く入れてその癖を消すために醤油が多く用いられる。関西はどちらかといえば軟水になるので、昆布のうまみが出やすく、少量の塩や醤油で美味しい味付けができる。