21委員会編『秋田をこう変えよう!:21委員会からの提言』(秋田文化出版,1993)をちょこっとだけ読む。
教材研究の一環として手に取ってみた。今から30年以上前、団塊ジュニア世代が成人になった頃で、まだまだ少子化や景気悪化などは感じにくい頃である。しかし、その頃から秋田では農業への不安が語られていた。
その中で、魁新報社の元社員の石川嘉明さんのコメントが印象に残った。
この間上小阿仁に行って驚いたわけ。北林孝市村長に「何人生まれましたか」と聞いたら、「二十人だ」と言うんですよ。「何人お亡くなりになりましたか」と言ったら「五十四人だ」と言うんですよ。つまりね、生まれる人の倍以上死んでいるわけだ。まあそれはおいといて、二十人のうち女性は十二人、つまり半分ですよ。そこでちょっと計算してびっくりしたわけですが、昨年生まれた十二人が全部村に残って、健康で結婚して子供を産んだ場合、何人産むだろうか。特殊合計出生率を一・五三人としますと、だいたい十八人産むんですよ。そのうち女性が半分ということになりますから、九人なんですね。この九人の女性が何人子供を産むかというと十三人、十三人のうち六人が女性、こうして行きますと、大変乱暴な計算ですが、上小阿仁の場合六世代で生まれる子供はゼロになってしまうんですよ。これは極端な例ですよ。だから秋田の場合も三十五年後、七十九万人になっていくわけでしょ。日本の場合も百年後で現在の半分、二百年後にまたその半分、三百年後にはゼロになるという計算もある。百年後のことは我々の世代の問題ではないが、確実に滅びの道”を歩いていると見ているわけ。
数年前、南外村に行ったときに、南外の農協の職員を一人養うのに十数人で養っていると言うんですよ。やがて四人で一人養わなければならないと、真剣に話し合っているんですよ。農協の職員を養うために農民が働くという重大な結果を招くことになる。だいたい組合員が五百人とかさ、そのくらいで農協がやって行けるわけがないですよ。だからいずれ県南、県北、中央に一つ、やがては一県一農協時代がやって来るかも知れない。この間大曲農業高校の草薙稲太郎校長と話し合ったんです。県内には農業高校が六校あって毎年三千人の卒業生を出している。今年の就農者はたった四人だと言うんですよ。農協初め農民達の間に本物の意識革命が起こりませんと、未来は開けてこないと思うんです。
