力武常次『日本列島の科学』(東海大学出版会,1978)を読む。
先日読んだ『なぜ磁石は北をさす』の著者であり、著者自身も「岩石屋」「地球物理屋」という表現を用いているが、鉱物学や地質学、岩石学というアプローチではなく、古地磁気学の立場から、プレートテクトニクスの解明のあらましが紹介されている。学術的な説明だけでなく、著者自身の過去の体験や学者の人物評なども入ってくるので、飽きることなく読むことができた。
現在は筑波にある国立防災科学技術センターの観測施設が岩槻にあったとの紹介が興味深かった。国立研究開発法人産業技術総合研究所のホームページによると、「埼玉県岩槻市の地下3500mから採取したボーリング試料について最新の手法で解析を行った結果、この岩石が、日本で最も大きい断層であり、一部が活断層である中央構造線のごく近傍(およそ500m以内)で変形した特殊な岩石(マイロナイト)であることが明らかとなり、関東平野の地下深部の中央構造線の位置を特定することができた」と説明されている。
円周40,000kmの大きさを誇る地球の岩石やプレートの動きを解明する施設が、自転車で行ける距離の観測所で研究されていたということが何よりも驚きであった。