『スンダ生活誌』

村井吉敬『スンダ生活誌:変動のインドネシア社会』(NHKブックス 1978)を読む。
つまらなそうな本だったので読み流すつもりだったが、著者自身がインドネシアのパジャジャラン大学に留学した際の経験をもとに説明されており、今年最後の読書と思いじっくりと読んだ。

ちょうど1970年代半ばの頃の話で、インドネシアが緑の革命や工業化を迎えた混乱が丁寧に説明されている。特に肥料・農薬とセットになった高収量品種による緑の革命は、それ以前の農村共同体を破壊するものであり、底辺層の格差がより拡大し、都市に貧困層が流入し、インフォーマルセクターの増大に繋がっている。1970年代からジャワ島の首都ジャカルタへの一極集中が問題となっているが、その背景には緑の革命による農村破壊がある。また、日本企業が押し付ける都市化や工業化といった近代化が、伝統的なインドネシアの習慣を破壊していると著者は指摘する。