『漂流遊女』

中山美里『漂流遊女:路地裏の風俗に生きた11人の女たち』(ミリオン出版 2013)を読む。
今はなき月刊誌「漫画実話ナックルズ」に連載された、底辺で働く風俗女の人生に迫るインタビュー記事である。
デリヘルやAV出演というレベルではなく、熟女風俗や本番ヘルス、立ちんぼといった底辺風俗で生活を支えている女性が取り上げられている。タイトルこそ刺激的だが、一応真面目な内容である。

一時期は華やかな生活を享受しつつも、結局は自分を大切にすることができなくなる風俗嬢の人生を通して、男性以上に心と身体が結びついている女性の運命が見えてくる。
あとがきの筆者の言葉が印象に残った。

 いろんな風俗嬢を取材して気づいたことがある。
それは、身体を売るという職業につきながらも、心の中で線引きをして、妙なところで自分を肯定する偏ったロジックだ。その線引きは人によって違う。
「セックスをしているわけじゃないから、ヘルスはソープ嬢やAV嬢よりはまし」
「AVの仕事は、不特定多数の人を相手にしているわけじゃないし、管理された場所で仕事をしているから風俗と一緒にしてほしくない」
「本番や粘膜接触がないし、知的な駆け引きが必要だから、SMは普通の風俗ではない」
などと、勝手に決めたヒエラルキーに自らの業種を位置づけ、安堵したり人を見下したりする部分が、私が見てきたエロの世界にはある。
そして、ごく狭いエロの世界から一般社会に目を向けると、性を売る仕事についている人が幸せでなければいいと思っている人が少なからずいることもわかった。
性を売ってしまったら、幸せになってはいけないのだろうか、幸せになれないのだろうか、そして性を売り続けていくとどんな将来が待っているのだろうか。そんなことが知りたくて、このインタビュー連載をはじめた。

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