内田康夫『「首の女」殺人事件』(徳間文庫 1989)を大体読む。
1986年に刊行された本の文庫化である。高村光太郎・智恵子夫妻の芸術作品を巡る殺人事件が、島根県江津市や福島県二本松市を舞台に展開していく。地図を横目に、少々の旅情気分を味わった。しかし、大変入り組んだ人間関係をモチーフにしており、ページの都合であろうか、最後は辻褄合わせの説明が延々と続く。
登場人物に一人である大学助教授の「智恵子はほとんど宗教的にといってもいいほど崇拝する高村光太郎に迎合するために、自分を矯めようと努力し、あげくの果て、挫折し絶望し狂ってしまった。(中略)もし智恵子が光太郎でない男と結婚したとしたら、どれほど幸福だったろうし、もしかすると、芸術家としても大成していたかもしれない」と感想を漏らすシーンがあるのだが、光太郎のやや独善的な結婚観が伺えて興味深かった。
『「首の女」殺人事件』
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