渡辺千賀恵監修『自転車主義革命—自転車を活かす新しいライフスタイル』(東海教育研究所 2001)を読む。
監修者の渡辺氏は、九州東海大学工学部土木工学科で、交通と都市設計を研究している専門家である。自転車の旅や魅力だけでなく、自転車便メッセンジャーや障害者のための自転車、放置自転車問題、レンタル自転車など、都市交通やビジネスとしての自転車のあり方について様々な角度から論じられている。車優先の社会から自転車にも配慮した社会への転換には、ただ自転車好きを増やすという簡単な問題でなく、バスや電車との連携、駅周辺の整備、商店街の活性化など、社会全体の複合的な問題であることが分かった。
京都議定書策定以降、低炭素社会への移行に向けて自転車が脚光を浴びているが、自転車先進国のオランダの猿真似するだけでは不十分で、日本人自身の環境に対する意識や都市そのもののあり方といった根本的な議論が求められる。
高度経済成長期の日本のモータリゼーションの進展についての項で印象に残った一節を引用しておきたい。
「道」も「路」も訓読みでは“みち”と読む。発音は同じだが中身は異なることをご存知だろうか。「道」という漢字には、人が脇目をふらずに進むとの意味があり(例:剣道・茶道)、転じて「東海道」などと使われるようになった。いまで言うクルマの空間、車道にあたる。一方の「路」は、「足」と「各」(人)からなり、ヒト空間にあたる。1950年代までは「道」と「路」が使い分けられていたが、やがて「路」のほうの“みち”が死語になり、「道」と「路」は画一的に“どうろ”と呼ばれるようになった。