地誌学 第1課題

 地誌学は,特定の場所や地表についての地理学的研究であり,空間的・地域的な特殊理法を見出そうとする科学である。その研究方法には以下の5項目があげられる。
1)分布図の作成と計量的な検討 人口分布図や水田率の分布図,地形図などを用いて,特定の場所での事象や分布を計量的に検討し,空間的・地域的に認識すること。
2)地域の類型と区分 Christallerの「中心地理論」など,同質地域や結節地域,総合地域など,地理的事象の場所的なまとまりを見出し,地域を設定し,地域に区分すること。
3)地域の構造 Köppenの気候区分やBurgessの同心円理論など,地域の内部構造を,地域を構成する諸要素や諸因子の組み合わせによって明らかにすること。
4)地域の連関 Isardの経済的結合関係の計量化など,地域を構成する諸要素が,相互に連関している状況を明らかにすること。
5)地域の形成 地域が形成され,推移していく歴史的過程や背景を明らかにすること。

【東南Asia・南Asia】
 India南部は安定陸隗に属するが,東南Asiaの東縁の環太平洋造山帯や,NepalからPakistanまでのAlps=Himaraya造山帯は,新期造山帯に属し,1991年のPinatubo火山噴火や,2004年のSumatra沖地震に代表されるように,地震・火山活動の活発な地域である。また,海岸部にはMangroveが広がり,1960年代以降,河口部の巨大Deltaの大半も水田開発が行われている。気候的には,大半がmonsoonのある熱帯雨林気候となっており,雨期を有効に活用した浮稲や棚田などの稲作が人々の生活を支えていた。しかし,近年地球規模の温暖化やIndonesiaの熱帯雨林破壊の影響のためか,monsoonの時期や地域のズレが目立つようになり,El Niñoなどの異常気象の引き金になっているとの指摘もある。
 元々,この地域は古くから民族移動が多い地域であった。しかし,19世紀以降,綿花やCoffee,砂糖黍,天然ゴムなどの商品作物の強制栽培地として欧米諸国による植民地化が進んだ。戦後,宗主国が民族や宗教,言語の分布を無視して国境を策定したため,欧米からの独立戦争終結と合わせて,国内の民族・宗教紛争が頻発することになった。印パ戦争やCambodia,Vietnam,東Timorでの内戦の結果,多くの難民が生まれ,民族や宗教が一段と多様化することになった。
 1990年代後半には,東南Asia10カ国がASEANを作り域内の経済・社会分野の相互協力を進めている。また1985年には,南Asia7カ国がSAARCを発足させ,域内の経済成長と国民生活の向上を目指した協調関係構築している。戦時中は日本の軍事支配下に置かれたが,大戦以降,JICAやODA,NGOによる技術援助や社会援助,開発支援が功を奏し,日本との経済的連携は緊密なものとなっている。

【西Asia・北Africa】
 西AsiaはArab Plateに,北AfricaはAfrica Plateにのる安定陸隗だが,TurkeyからAfghanistanに至る地帯はAlps=Himaraya造山帯に属し,地震・火山活動の活発な地域である。地域一帯全て砂漠気候に属し,古くからOasisを中心に湧水や地下水を利用して灌漑農業が発達した地域でもある。Nile川やTigris/Euphrates川では,Egypt文明やMesopotamia文明が栄え,7世紀にはIslām教が誕生した地である。8世紀には西Asiaから北AfricaにまたがってIslām教徒の大帝国がつくられ,Silk Roadを通して,文明の十字路の役割を果たした。20世紀に入り,石油や天然ガスが開発されたが,欧米の石油資本が潤うだけであった。戦後,OPECやOAPECで各国が結束し,産油国資本となったが,石油Monocultureから脱却できず,独裁政権によって格差や貧困が拡大し,現在では全ての国が穀物輸入国に転じている。
 連合赤軍によるTel Aviv空港乱射事件がArab諸国から英雄視されるなど,親日感情を持つ人が多い地域である。日本は石油全輸入量の90%をこの地域に依存している。

【中・南Africa】
 Africa大陸東部は大陥没地帯があり,火山・地震が多い地域である。Congo盆地南側から大陸南端まで標高1000m以上の盆地となっている。また,赤道を通るCongo盆地は熱帯雨林気候で,その周辺はSavanna気候,以降南に下るに連れて,Steppe気候,砂漠気候,大陸南端は地中海性気候と帯状の気候区分が見られる。
 様々な風土病でも知られ,Tsetse蠅を媒介したTrypanosoma症やmalariaなどが猛威をふるっている。現在,LiberiaやSierra LeoneではEbola出血熱の拡大が懸念されている。
 CassavaやBanana,モロコシ,ヤムイモなどが主食作物であるが,植民地支配の影響が強く,Cacao豆やCoffee,落花生などの輸出作物,また鉱物資源が各国の経済を支えている。
 1960年を境に多くの国が独立を果たしたが,国政を担う近代的民族国家の建設は,政治的にも経済的にも難しく,社会主義の方向性も模索され,国境策定や資源を巡り激しい内戦や民族紛争が続いている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください