『キオミ』

内田春菊『キオミ』(福武書店 1995)を読む。
1994年8月号の「海燕」に掲載された表題作のほか、6編の短編が収められている。女性が読むアダルト小説のような内容で、女性の子宮が、女性と男性の間の心理的な溝の象徴として描かれる。妊娠や出産を巡る女性の不安なども描かれるのだが、男の私には、正直あまり心に残る内容ではなかった。

妊娠は無事安定期に入ったが、それでも私はまだ蕗男をかき回し棒としてこき使っていた。私はまるで蕗男の体の中の精液を全部出させてやる気でいるみたいだった。そしてそれでも飽きたらず、彼のいない時は自分で自分を慰めた。私の中の暗黒は、蕗男と、その子どもと、牧男の亡霊の三人がかりでも埋められないのだ。きっと一生私はこの渇きの中でもがいていなければならないのだ。

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