佐藤勝彦『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった:マザーユニバースとチャイルド・ユニバースの謎』(同文書院,1991)を読む。
難解な宇宙の始まりや「4つの力」について、例えや小学校レベルの知識を用いて分かりやすく説明されていた。パラパラと読み流すつもりであったが、最後まで文章の持つ魅力に引きつけられた。著者はホーキング博士の著書も訳されており、難しいことを易しく説明できる頭の良さをひしひしと感じた。例えば著者は宇宙の「果て」について、次のように説明する。
いま、東京を出発点に北にまっすぐ進んでみましょう。北極を通りこしそのままどんどん南に行ってしまう。さらに、進むと南極を回って東京に戻ってきますが、そこで地球は終わりではなく何周でも前に進むことができます。その意味で、地球には、ここから先は地球ではないという「果て」はありません。「果て」がないなら地球は無限に大きいのでしょうか。もちろん、そんなことはなく表面積には限りがあります。
他に気になったところを書き留めておきたい。
宇宙という言葉は、中国の漢時代の書物「淮南子」に「四方これを宇といい、往古近来これを宙という」と書いてある。空間的広がりと時間的広がりを合わせたものが宇宙といい、現在の相対性理論の考え方と一致している。
「特殊相対論」によれば、時間がゆっくり進む度合いは、宇宙船が光速度の半分のスピードになると1.15倍、光速度の90パーセントになると2.29倍、99パーセントになると7.09倍、さらに速くなるとその効果は急激なカーブを描いて上昇し、そしていよいよ光速に達してしまうと、われわれから見て、その宇宙船は時間が止まってしまう。
ニュートンによれば、月と地球の間には万有引力が働いて互いに引き合っている。引き合う力と遠心力がうまくつり合って、月は飛んでもいかないし、地球に落ちてくることもないと説明される。これに対して、「相対論」はまず、大きな質量を持った地球がデンとあることによって、地球の周りの空間が歪められていると考える。そしてその空間の曲がりに沿って月が進むとし、重力とは空間の曲がりによって発生する力であると説明する。
昔は電気の力と磁力の力は別のものと考えられてきた。ところが1820年、鉄の棒にコイルを巻いて電気を通すと磁石になることが発見され、その後マックスウェルによって電気も磁力も統一に説明できるようになった。