月別アーカイブ: 2023年8月

『恐龍はなぜ滅んだか』

平野弘道『恐龍はなぜ滅んだか』(講談社現代新書 1988)を読む。
タイトルの通り、6500万年前の巨大隕石の衝突と大規模火山噴火が恐竜が滅んだ理由だという結論である。ただし、それまでの前提の説明が長くて飽きてしまった。私の最も苦手する生物・植物の分類学に関する話が半分を占めており閉口してしまった。
ただし著者は生物が専攻ではない。早稲田大学教育学部で地球科学教室を担当され、同大学院理工学研究科地球・環境資源理工学専攻の教授でもあった方である。
気になったところを書き抜いておきたい。

  • 植物が最初に上陸に成功したのは、約4億年前のことである。この時以降、植物は体の支持と温度変化、それに乾燥からの防禦に優れたものが順次繁栄していくことになる。(シダ植物から裸子植物の針葉樹林、そして被子植物へと進化していく)
  • 200万年前から1万年前までの時代を、特に氷河時代と呼ぶ。この時代が、寒冷化傾向のピークで、世界的に4回の氷河期が知られている。
    現在のグリーンランドの氷河は175万平方キロメートルあるが、氷河時代の最大の氷河は、ヨーロッパの北緯49度、パリにまで下がった。その面積はグリーンランドの10倍、1850万平方キロメートルと計算されている。この最大の氷河の時代には、対馬海峡も陸となり、多くの動物がアジア大陸から渡ってきた。私たちの祖先も、その時に日本人になったのだと考えられている。
    この氷河時代は1万年前に終わりを迎え、5千年前には、縄文海進と呼ばれる温暖な時期があった。極地方の氷も融け、海水の量が増えたため、海水準が上昇した。日本でも、現在の関東平野の奥深くまでが海になり、関東山地との境界地帯や丘陵地に、縄文時代の遺跡が知られている。しかし、その後、地球はまた寒冷の傾向になった。
  • ちなみに、氷河時代とそうでない時の赤道海域の水温の違いは、わずか4度Cであるそうだ。

「希望の竿燈」

本日の東京新聞夕刊に、東北三大祭りの一つである秋田の竿燈が取り上げられていた。
1学期に取り上げた私大の入試問題に祭りに関する問題が出題されたので、簡単に復習しておきたい。

青森ねぶた祭り

秋田竿燈祭り

仙台七夕まつり

以上が「東北三大祭り」だが、東北6県の他の3県から指摘があったのだろうか。岩手、山形、福島の祭りも加えて紹介している観光サイトが多い。ただし、最後に取り上げる福島は、県全体を代表する祭りではなく、福島市だけの祭りであり、いわき市や会津若松市、郡山市では独自の祭りが行われている。このあたりは幕末の抗争を経て福島県が誕生した歴史に照らし合わせると面白いかもしれない。

岩手さんさ踊り

山形花笠祭り

福島わらじ祭り

『いつも読みたい本ばかり』

渡部一枝『いつも読みたい本ばかり』(講談社 1989)をさらっと読む。
著者は 1945年にハルビンに生まれ、1989年に18年間の保母生活に終止符をうち、チベットや中国、モンゴルへの旅を続けながら作家活動に入った人物である。
その著者が作家専業になったばかりに刊行された本である。日常生活を綴ったエッセーの中で、天気や季節、野菜などの身近なテーマの本を紹介したり、子ども向けの絵本やアフリカの実際、原発の恐怖など、幅広いジャンルの本も品揃えに加えている。

「インド、南シナ海関与強化」

本日の東京新聞朝刊に、インドがフィリピンやベトナムとの軍事連携を強化し、南シナ海でのプレゼンスを高めていくという記事が掲載されていた。全くもって意味のない不要な緊張を招くだけの外交である。貧困や洪水で困っている人たちのためにこそ財政を動かしていくべきである。アメリカに追随するだけでよいのだろうか。非同盟・全方位外交の伝統はどこへ行った?

歴史に踏み込むと、かつてインドは日本の独立(米国隷属)を果たしたサンフランシスコ平和会議に参加しなかった国の一つである。インド・ビルマ(ミャンマー)・ユーゴスラヴィアの3カ国は、講和後における外国軍隊の駐兵を予見するような平和条約の規定や賠償問題への不満などを理由に会議への不参加を表明している。

様々な軋轢を抱える南アジアの盟主であるインドには、1955年のアジア・アフリカ会議でネルー首相が提唱したように、アメリカにもロシアにも属さない第3世界の結集軸として存在感を示してほしい。

「ニジェール2邦人退避」

本日の東京新聞朝刊に、ニジェールの軍事クーデターの様子が掲載されていた。
そもそもニジェールは日本から馴染みが薄い国である。西アフリカの内陸に位置し、面積は約130万平方キロあり、日本の役3.3倍となっている。人口は約2600万人で公用語はフランス語である。一人当たりのGNIは610ドル(2022)となっており、世界最貧国の一つである。ただしウランなどの鉱物資源の輸出が好調なため、失業率は0.5%となっている。

国境を見れば分かるが、定規で引いたようにまっすぐな数理的国境となっている。フランスがアフリカ支配に都合の良いように国境を引いたことが、サヘル地域の貧困と混乱に繋がっている。南側のナイジェリアとはニジェール川で繋がる同じ民族である。北側をフランスが支配したのでフランス読みでニジェール、南側はイギリスが支配したので英語読みでナイジェリアとなっている。もうすぐ人口2億人に達しようかというナイジェリアがニジェールを圧倒しているのが実情である。

記事を読む限りでは、軍事クーデターの背景にどのような動きがあるのかよく分からない。イスラム過激派なのか、ロシアや民間軍事会社ワグネルが絡んでいるとの報道もある。西アフリカ全体に波及する事件ともなるので注目していきたい。