藤原和博編、櫻井よしこ、刈谷剛彦、鈴木寛『中学改造』(小学館 2002)を読む。
情報や総合的な学習の時間が導入され、ICTや横断的な学習がもてはやされていた時期に発行された本である。リクルートから杉並区立和田中学校の校長へ転身する前の、藤原氏の教育観が表れている。その中で印象に残った点を書き置いておきたい。
おそらく、これからはどの学校でもゲストティーチャーを招いて授業することが増えると思うんです。しかし、ただ単にゲストティーチャーを読んで話をさせるという単純な一方通行では、子どもたちの心に何も残らない。(中略)
私自身にはコーディネーターとしての力はありますが、もし教師を抜きにして私がずかずか教室に入っていって突然「授業やります」と言い、次々にゲストティーチャーを招いても成功しなかったと思う。生徒たちにとっては、教師という存在に対する安心感がまず前提としてあり、教師には50分で一つの授業を運営する技術がある。だから、この”掛け合い”がものすごく重要なんです。ゲストティーチャーを呼べたことが大事なのではなくて、教師とゲストティーチャーの間で、”掛け合い”が起こることが大事だということ。(中略)
教師の力量が、そこで試されると言っても過言ではないですね。ゲストティーチャーを連れてくるだけなら、そういう人物やコネをつければいいだけ。あるいは有名人をよく知っている人間を味方につければいい。しかし、そのゲストの持ち味を教育効果が大きくなるように授業に落としこむのが、難しい。