江戸川乱歩『死の十字路』(ポプラ社 1972)を読む。
本格的な探偵小説で、読者には予め分かっている犯人を明智小五郎ともう一人の探偵が追い詰めていく構成となっている。いささか出来すぎな展開もあるが、過激派学生が登場するなど、時代を感じる小説であった。
月別アーカイブ: 2022年11月
『お父さんのための携帯電話ABC』
法林岳之『お父さんのための携帯電話ABC』(日本放送出版協会 2007)を読む。
携帯電話で電話が繋がる仕組みに始まり、各社のケータイの種類、ケータイでのインターネットを活用したサービスなど、スマホが登場する前のケータイにまつわる情報がまとめられている。3G回線が普及し始めた頃の話で、「着うたフル」や「待ちうた」、「フルブラウザ」「LISMO」など、つい最近のことなのに懐かしさを感じてしまうサービスが紹介されている。
改めて、スマホが私たちの生活をどれほど変えたのかと、ここ10数年の変化に思いを寄せてしまう。
『人間豹』
江戸川乱歩『人間豹』(ポプラ社 1973)を読む。
久々に全部読み通した。途中殺人事件が起こるので、変装ばかりの怪人二十面相シリーズではないという安心感もあり、最後まで何とか読み終えた。途中アパートの隣に住む大学生が銃をぶっ放したり、結局犯人は正真正銘の人間と豹のあいのこであったという設定など、疑問を感じる場面があった。
『進化を飛躍させる新しい主役』
小原嘉明『進化を飛躍させる新しい主役:モンシロチョウの世界から』(岩波ジュニア新書 2012)を手に取ってみた。
モンシロチョウは雌雄とも大きさや形が同じなのに、どうして雄は雌を識別できるのであろうかという疑問に対する研究の過程が丁寧に説明されている。結論としては人間の目には見えないがモンシロチョウには見える紫外色できっちりと雌雄が識別できるとのことである。筆者は後半、さらに論を進めて、モンシロチョウの雄がモンシロチョウによく似たスジグロシロチョウの雌に対しても求愛行動をとることを突き詰めている。実際に異種間交雑が行われたという事実は確かめられなかったが、異種間交雑から新しい新種が生まれることの可能性について言及したところで終わっている。
「カタールに変革もたらすか」
本日の東京新聞朝刊に、サッカーW杯が開催されるカタールのお国柄について報じられていた。
確かにカタールといっても原油国でお金持ちの国というイメージしかない。1970年代まで英国の保護下にあり、アラビア語と英語で24時間放送する衛星放送局アルジャジーラがあるため、アラブ圏と欧米の橋渡し的な国だと勝手に理解していた。
人口は280万人で、一人当たりのGDPは約6万2千ドル(2021年)となっており、世界トップレベルの数値である。日本との関係が深く、原油・天然ガスを主とする輸出額のトップは日本である。中東の中でも一番関係が深いのに、日本の存在感は薄い。国内人口280万人のうち、カタール国籍を持つ富裕層は2割程度であり、残りの8割は南アジアやアフリカからの移民が占める。中東の産油国の基盤的な労働を担うのは南アジア出身の労働者が多いというのは共通テストでも出題されている。
イスラム教の教義の否定につながる欧米型民主主義や女性スポーツの普及などは、一朝一夕に解決できるものではない。他国があれこれ口を出すのではなく、アラブ圏の国内での議論の熟成を待ちたい。