第134回直木賞受賞をはじめ、数々の賞を受賞した、東野圭吾『容疑者Xの献身』(文春文庫 2008)を読む。
確かに前評判通り面白い作品であった。ミステリーの要素と文章中に表れていない登場人物の複雑な思いが上手く表現されていて、名作に値する作品であった。最後の最後のページで、加害者でもあり被害者でもある石神の咆哮が描かれるのだが、脳裏に残るシーンであった。
もう少し登場人物の心模様を描いてほしいという気持ちもあったのだが、夏目漱石の『こころ』に登場するKのように、心の動きを全く省いて、読者の想像に任せるスタイルもまた良いのかもしれない。