江良直紀『社会科から楽しめる世界遺産:旅行者・教師・生涯学習者のための1冊』(幻冬社ルネッサンス新書 2016)を読む。
大阪府立高校で世界史を専門とする著者が、自身が実際に赴いた世界遺産の魅力を語る。世界遺産の決定過程や世界遺産検定マイスター級の試験内容など、あまり耳にしたことがない話が続く。数多くの世界遺産が紹介されていたが、性的彫刻が無数にあるインドのカジュラーホの寺院群と、アゼルバイジャンのアテンシュギャーフ拝火教寺院が興味深かった。アゼルバイジャンでは太古より自然発火する油田が数多くあったため、ゾロアスター教(拝火教)の信仰が盛んだったようだ。
あとがきの中で著者は次のように語る。
何より、公立学校の教師は、その勤務先によって仕事の内容が全然違う。小学校、中学校、生徒がほとんど大学進学する高校、生徒がほとんど就職したり、退学率が高い高校、定時制の高校、特別支援学校など、各学校での仕事の質や内容が、全く違う。
もちろん、どんな学校に勤務しても、生徒と関わり、それなりにしっかり仕事をしなければいけない。ただやはり、向き不向きというのもある。その教師の適性・能力・得意分野が発揮できない学校に、勤務することも当然ある。私は、自分の能力や得意分野が、ほとんど発揮できない時に、非常に精神的に落ち込んだ時期があった。そんな時に、せめて自分の研究分野・得意分野を、一冊の本として残しておこう、という決意をして、この本の執筆を決意した。この本の執筆は、精神不安定になっていた自分の大きな「生きがい」となり、自分は高校の社会科教師、世界史が専門なんだということを、改めて強く実感させてくれた。そしてどんな事にも前向きに学ぶ姿勢で教師の仕事を行おうと思えた。