内田康夫『遺骨』(角川文庫 2001)を読む。
四国にある寺に父の遺骨を納骨したいと申し出た、ある薬品会社に勤める男が殺害され、骨壺の行方が分からなくなる場面から始まる。
実はその薬品会社が旧731部隊の幹部が設立した医薬品メーカー「ミドリ十字」を想起させるものであり、骨壷の中には、戦時中の強制労働連行により足尾鉱山で働いていた韓国・朝鮮人たちが、731部隊に実験材料とされた証拠が入っているという、なかなかの社会派ミステリーとなっている。
終戦後の大陸からの帰国時の混乱や、在日朝鮮人の帰還事業なども物語の背景となっており、歴史の闇を切り裂く意欲作である。
謎解きミステリーとしては、あまりにご都合主義的な展開が気になるが、読後感は良かった。
『遺骨』
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