森永卓郎『「家計破綻」に負けない経済学』(講談社現代新書 2004)を読む。
著者は当時の小泉内閣における金融政策が富裕層に手厚いものであり、真面目に働いている中間層を切り捨てていると主張する。
デフレというのは、現金の価値が上がった状態を意味しますから、金を持っている者は非常に有利になります。底値で拾えば、同じ金額で土地なら(1990年に比べ)七倍、株なら五倍の資産を買うことができます。そして逆バブルがはじけ、資産価値が上昇する過程で売り抜けば、二倍、三倍もの利益をかんたんにあげることができるのです。
そして著者は次のように述べる。
金が金を生み出す、こんな社会がいいとは私は毛頭思いません。反対に、労働が金を生み出す社会、真面目にものづくりをおこなう者が、贅沢でなくてもそこそこの報酬を得て生きていける社会に立ち返るべきだと思っています。それが私の「年収三〇〇万円の経済学」の基本にあります。しかし、少なくとも、金が金を生み出すという考え方が新しいパラダイムになってしまったことを理解しておかないと、私たちは政府や弱肉強食の金融資本にいいようにやられてしまいます。経済格差をもっと拡大することが善だと思っているような政府は、家計の危機から私たちを決して救済してくれません。