月別アーカイブ: 2009年10月

『結婚難民』

佐藤留美『結婚難民』(小学館101新書 2008)を読む。

 数年前から、「勝ち組」「負け組」「格差社会」「二極化」「下流」「ワーキングプア」といった言葉が、半ば定着しつつあるほどまでに流行し、ロスジェネ男たちは、否が応でも、自分は勝っているのか? 負けているのか? 下流なのか? と自問させられる日々を送ることとなりました。
そして、2~3年前から「少子化問題」がメディアで激しく取りざたされるようになると、いつしか議論は子づくり・出産の手前段階である「結婚問題」に飛び火。
そこに、ワーキングプアと非正規雇用といった言葉の普及が重なって、「ワーキングプアは結婚できない」といった記事が躍るようになりました。
これは翻って考えると、「勝ち組は結婚できる」ということです。
こうしていつしか「結婚」は勝ち組を証明するステータスとなり、「結婚」は「する・しない」という問題よりは、「できる・できない」という問題で、語られるようになりました。
挙句、最近では非婚化も少子化もまるで「プロポーズしてこない男が悪い」という風潮になってきました。

著者が、上記のように「あとがき」で述べているように、マスコミによって「草食系男子」「オタク男」「無責任男」「ひ弱男」と喧伝され、こと結婚問題では男性に分が悪い。73年生まれの著者は、結婚したくてもできない未婚男性を取り巻く経済環境や、社会状況、そして女性の側に批判の目を向ける。
ここ数年出版された三浦展や、山田昌弘、森永卓郎、酒井順子らの「格差社会」にまつわる著書を参考文献として挙げており、分かりやすく現在の流れを押さえることができる一冊である。

パンフレット研究:恵泉女学園大学

恵泉女学園大学のパンフレットを読む。
都心にあるのかと思っていたが、多摩センターの駅からスクールバスで8分と、遠方からの学生にとっては少々不便な場所にある。
1929年にキリスト教徒の河合道が創設した恵泉女学園普通部を起源とし、戦後、恵泉女子農芸専門学校が短大、そして4大へと発展していった、一風変わった大学である。現在では、日本語日本文化学科と英語コミュニケーション学科、文化学科を擁する人文学部と、国際社会学科と人間環境学科がある人間社会学部が置かれている。
今でもその名残なのか、1年次の共通科目に「生活園芸」という農業体験科目が置かれている。短大時代は全寮制を敷いていたようで、修道院的な教育環境がベースになっているのであろう。週4日、1時限と2時限の間に25分間の礼拝の時間が設けられている。
また、共通科目に「平和研究入門」や「ヒロシマ・ナガサキ学」といった授業が開設され、大学院には「平和学研究科」なる修士課程が設置されている。この平和学研究科では、「戦争・武力紛争や軍事体制の強化と言った直接的暴力、経済格差、差別・人権侵害、環境破壊と言った構造的暴力など」を生み出す「植民地主義のような歴史的背景、宗教的・文化的不寛容などの社会構造」を変えていく人材を育成するという。大変興味深い研究科である。
創設者の河合道は日本YWCAの創始者であり、キリスト教的な平和主義・人間主義・環境保全が、大学のカリキュラムの底流にしっかり流れている。先ほど読んだ鎌倉女子大とは対照的な大学である。

パンフレット研究:鎌倉女子大学

鎌倉女子大学のパンフレットを読む。
1943年に京浜女子家政理学専門学校を母体に、1959年4年制大学として発足し、1989年に現校名に変更された程々の歴史のある学校である。大船駅から徒歩8分の至便な場所にあり、現在では家政学部と児童学部、教育学部、短期大学部を置く。短期大学部には、幼稚園教諭2種、小学校2種の3種類の資格が取得できる初等教育学科が置かれている。家政、栄養、幼児教育、初等教育に絞った学部構成は、女子大として成功であろう。
また、学部構成といい、落ち着いた環境や少人数教育といい、典型的な郊外型女子大学である。幼稚園から大学まで経営しており、財政的に余裕のある法人に特徴的な大学である。入試倍率を見るに、管理栄養学科以外は厳しい状況である。

パンフレット研究:千葉商科大学

千葉商科大学のパンフレットを読む。
慶応大学SFCを設立し初代総合政策学部長を務めた、加藤寛前学長のイメージが強かったので、十数年前にできた新設大学かと思っていた。しかし、パンフレットを読んで初めて、1928年設立の巣鴨高等商業学校が前身となっている80年近い伝統のある学校だと分かった。元が商業学校なので、商学科と経済学科、経営学科を有する商経学部が中心の大学である。特に簿記には力を入れ、08年度には日商簿記1級に7名、公認会計士に1名が合格している。
千葉県市川市にあり、埼玉からは遠い学校のイメージがあるが、武蔵野線を使えば越谷駅から45分と意外に近いことが分かった。
また、少子化の影響であろう、2000年に慶応の総合政策学部と環境情報学部が合体したような政策情報学部が設置され、09年には完全に就職予備校と化したサービス創造学部なるものまで生まれている。
政策情報学部は学部としての理念がよく分からない。行動し続けることで社会の第一線で活躍する能力が身につくと喧伝されている。しかし、先行の慶応SFCがずっこけつつある現在、その二の舞になることは免れないであろう。
さらに、09年に始まったサービス創造学部は、他大学でいうホスピタリティやサービス経営にあたるのであろう。1年次より業界セミナーやインターンシップを通じてビジネスマインドを培うという奇妙な学部である。
要するに、商経学部以外は眉唾物であろう。

パンフレット研究:上野法律専門学校

上野法律専門学校のパンフレットを読む。
1996年に設立され、「国家公務員・種」や「地方公務員初級」「警察官」「消防官」の公務員試験対策に特化した1年制ないし2年制の専門学校である。2008年度は公務員試験の1次試験合格率が96%、2次試験までの合格率も80%の合格実績を誇る。また、公務員試験に落ちてしまっても民間企業への就職もフォローするなど手厚い体制を敷いている。
広告宣伝費を抑えパンフレットも簡素なものとなっているが、実績と口コミで人気が広がっている学校である。