月別アーカイブ: 2009年7月

『情報は一冊のノートにまとめなさい』

奥野宣之『情報は一冊のノートにまとめなさい:100円でつくる万能「情報整理ノート」』(ナナブックス 2008)を読む。
行政や企業の取材記事を手がける20代の若い著者が、自らの経験と失敗を基に、100円のA6サイズのノートに情報管理、スケジュール管理そして日記のすべてをまとめる方法を提唱する。
従来のシステム手帳は自由である反面、煩雑さやランニングコストの高さがネックとなる。また綴じ手帳では不要なページが多く、紙数の制約を受けてしまう。著者は一冊のノートに仕事もプライベートも区別せず、会議の記録やID、パスワード、また映画の半券やら電話のメモ、ふと思いついたアイデアまで全てを貼り付けて情報を一元化する具体的な手法を様々紹介する。
そして「必要な情報をすぐに引き出せるようにすることで、さっさと忘れ、悩みや心労、不安とはおさらば。過去にも未来にも煩わされず、現在だけをストレスなく生活しよう」と述べる。

わたしも先日まで「超整理手帳」を合計5年ほど使っていたが、仕事では使いづらく、プライベートのちょっとしたスケジュールをまとめるだけに終わっていた。その前はシステム手帳を使っていたが、嵩張る上に、リフィルの差し替えが面倒で3年を超えるまえに止めてしまった経験がある。
私もA5ノートによるスケジュール管理を始めたところなので、名刺を貼ったり、ポストイットの活用など工夫してみたい。
著者も紹介しているが、最近「テープ糊」なるものが文房具屋で売られている。この「テープ糊」をうまく使えば、ノートの余白にメモをどんどん貼ることができ、仕事にもプライベートにも自由自在に工夫できるノートが完成する。

『妄想少女:~「彼」依存症~』

高橋ヒカル『妄想少女:~「彼」依存症~』(文芸社 2007)を読む。
いじめをきっかけとして引きこもりになってしまった中学校3年生の女性が、自らの妄想癖や性欲、対人不安症を赤裸々に語る。実話なのか仮構なのか判然としない不思議な日記文学である。

『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』

石田衣良『目覚めよと彼の呼ぶ声がする』(文藝春秋 2007)を読む。
40代になった著者があちらこちらの雑誌に書き散らしたコラムがまとめられている。特に30代の女性誌に愛読されている「クロワッサン」に寄せた文章に惹かれた。現在30代半ばを超えたばかりの私にとって、日常や仕事に流されていては、心の若さがこれからどんどん失われていってしまう。この夏を機に生活を少し変えていきたいと思う。

人の心というものは、目じりや首筋の肌なんかよりも、ずっと乾きやすく張りを失いがちなのです。化粧品やファッションにつかう費用の十分の一でもいいから、女性のみなさんは心の水分のためにお金をつかってください(その女性の半分でいいから男性にもがんばってほしい。みなさんのまわりでもそうだと思うけど、中年男性の心の硬さはすでに壊滅的だ)。
では、なにをすればいいか。こたえは簡単で、肉体と同じように、心だっていつも動かしておく必要があるのです。固まったままの心は、老化も早いもの。人間の精神は適度の運動によって、しなやかさや張りを保つことができるのです。
実はそのためにこそ、あらゆる文化・芸術というものがあります。大人の女性なら、文化の効能を覚えておいて損はないはず。すべての化粧水は肌に水分を補給するためにあり、すべての文化は心にうるおいをもたらすためにある。化粧水と同じように、自分にあう作品を気軽にどんどん試してください。
怖がることなんてぜんぜんないのです。どこかの才能ある作家が、十年かけて死ぬ思いで書いた本を、寝そべって読む。作曲家渾身の白鳥の歌を、晩ご飯のBGMにする。つくっているほうは必死でも、それがどんなふうに楽しまれるかについては、誰も文句なんていいません。それくらいの軽い気もちで、いろいろな芸術作品にふれるのが大切です。涙をぽろぽろ流したり、腹を抱えて笑ったり、一行の台詞やひと筋のメロディに撃たれて、その場に立ち尽くしたり、日常の生活ではなかなかつかうことができない、感情の極端な振れ幅を思いきり楽しむ。それが心の若さを保つには、一番いい運動なのです。

『富豪刑事』

筒井康隆『富豪刑事』(新潮文庫 1978)を読む。
浪人生時代に筒井康隆氏の作品を20冊近く貪るように読んだ記憶がある。『家族八景』、『夢の木坂分岐点』『エディプスの恋人』など、タイトルは思い出せないが、受験という現実から逃れるために活字を追っていた気がする。駿台予備校1号館の脇の、新御茶ノ水駅近くのベンチで、一人寂しく読書する自分がいた。