二葉亭四迷『浮雲』(岩波新書 1941)を読む。
現実の多忙な日々のストレスを忘れるような小説が読みたいと思い、大学時代の近代文学のテキストとして購入した『浮雲』を読み返してみた。100年以上の明治時代初期の話であるが、主人公の文三と共通する引っ込み思案なくせに妄想癖のある自分の嫌な性格が自覚させられ、あまりストレス解消とはならなかった。内容的には中途半端な片思い小説であるが、今から120年前に書かれたとは思えないほど人物描写が活き活きとしているのは驚きである。
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本日の東京新聞夕刊
本日の東京新聞夕刊に、テロ対策特別措置法とイラク復興支援特別措置法に基づき海外に派兵された自衛隊員のうち16人が、日本に帰国した後、在職中に自殺したとの記事が載っていた。
政府の答弁書によると、派遣と死亡との因果関係は「一概には申し上げられない」とのことだが、看過できない状況である。
現在の日本において自衛隊に入隊するのは、一部の幹部を除いては、家族事情や、地域的、経済的に不利な立場に置かれた若者が多い。そうした若者が自殺に追い込まれるというのは、一つの格差問題として捉えてもよいのではないか。
『夢・挑戦・達成:未来を拓いた10代たち』
香山リカ監修『夢・挑戦・達成:未来を拓いた10代たち』(廣済堂出版 2003)を読む。
香山リカの名前に魅かれて手に取ってみたが、高校の宣伝という意味合いの強い本であった。校長にプロスキーヤーの三浦雄一郎氏を迎え、単位制通信制高校を全国展開するクラーク記念国際高等学校が全面的に協力しており、同校の在学生または卒業生で、世界を舞台にした夢に向かう若者の姿を追う。オリンピックを目指すスノーボーダーや、アメリカでの活躍を狙うバス釣りのプロ、また、ヒマラヤ登頂を達成した若者など、破天荒ながらも魅力のある姿を豊富な写真を交え紹介する。
結局は学校の中にいる「例外」的な生徒を取り上げ、イメージアップを計るだけの本だろと内心毒づきながらも、10代後半から20代前半の若者の真剣な眼差しを見て、蔭ながら応援したいという老婆心を禁じ得なかった。
『希望のビジネス戦略』
金子勝・成毛眞『希望のビジネス戦略』(ちくま新書 2002)を読む。
慶応大学経済学部教授の金子氏と、元マイクロソフト日本法人の 成毛氏の日本経済の不況打開の対談
『風の歌を聴け』
村上春樹『風の歌を聴け』(講談社文庫 1982)を読む。
ここしばらく仕事で忙殺されているので、たまの休みくらい現実から逃避したいと思い、本棚の奥から引っ張り出してきた。高校か大学時代に読んだことがあるのかどうか記憶が定かではないが、ページを繰る小1時間ばかし仕事を忘れることができた。
内容は執筆当時29歳の作者が21歳の大学生時代の一夏の生活を振り返るという設定になっている。現在住む東京と田舎、そして8年間という「距離と時間」の差に対する意識がテーマとなっている。大学での生活から8年間が経過したが、果たしてその間隙は成長であったのか、後退であったのか、いやそれとも時間そのものが流れていないのか。僅か8年前のことなのに架空のように感じてしまう20代最後の作者の心境が描かれ る。
タイトルの「風」について作中の火星の大地に吹き荒れる風をして次のように言わしめる。
君が(火星人が掘ったとされる)井戸を抜ける間に約15億年という歳月が流れた。君たちの諺にあるように、光陰矢の如しさ。君の抜けてきた井戸は時の歪みに沿って掘られているんだ。つまり我々は時の間を彷徨っているわけさ。宇宙の創世から死までをね。だから我々には生もなければ死もない。風だ