日別アーカイブ: 2007年10月27日

『日本経済は復活する!:トップリーダーたちの解答』

嶌信彦・榊原英資著、TBS報道局経済部編『日本経済は復活する!:トップリーダーたちの解答』(アスキーコミュニケーションズ 2003)を読む。
私の家には衛星放送がないので分からないが、BS-iというチャンネルで現在も放映している「榊原・嶌のグローバルナビ」という日本の経済界を代表する面々との対談番組の単行本である。経済報道の第一人者である嶌氏と「ミスター円」とも称された元大蔵省国際金融局長の榊原氏が、日本の経営者やエコノミスト33人に日本経済の当時のデフレ不況の分析やその打開策を尋ねている。
榊原氏の「僕はよく皮肉で、『アメリカン・イニシアティブ』という言葉を『アメリカン・イニシアティブ・ウィズ・ジャパニーズ・マネー』だって言うんですよ」という発言に示されるように、「失われた10年」での米国の経済復活がいかに日本のマネーに支えられてきたのという現実が、少しずつであるが巨視的に捉えることができるようになった気がする。
プラザ合意以降、米国自らがドルをばらまき、意図的なドル安政策を敷き、財政赤字、貿易赤字を演出する一方で、日本は一部の輸出産業を守るために、極端な円高に振れないよう米国債や米国証券市場を通じてドルを買い続け、80年代の加工貿易型の輸出産業立国のポジションにせっせと戻ろうとした。そのため、公定歩合をぎりぎりまで下げたにも関わらずマネーサプライが落ちてしまいデフレを招いた。そのデフレに不良債権や少子化まで重なって、いくら公共投資や減税をしても梨のつぶての構造不況をもたらした。そして、せっかくの円高のメリットを生かした消費構造改革を遅らせてしまった。日本の流出した為替差益が米国の覇権を支えているといっても過言ではない状況が生まれてしまったのである。

その中で三井物産戦略研究所所長の寺島氏の発言が印象に残った。教科書的な社民的言説であるが、ずばり核心を突いている。

私たちの先輩の経済学は、貧困だとか不平等だとか、そういう社会的価値の問題に正面きって取り組んできたじゃないのかと。もう少し、そういう問題意識を取り戻そうよというのが私の問題意識。その前提にあるのが、アメリカ経済学批判−金融肥大型、マネーゲーム型のアメリカ経済学批判なんです。
(中略)(ヨーロッパがグローバル資本主義を受け入れながらも、雇用の安定、環境の保全、福祉の充実という分配の構成のバランスを取ろうと模索している中で、日本は10年間アメリカ型モデルを追求してきた事実を踏まえて)中間層を育てていく資本主義。そういう機軸を持っていなければ、われわれは何のために資本主義というシステムにこだわってきたのかということになる。その機軸とは分配の機軸です。分配の機軸をどういう思想を持って見直していくか、小泉内閣は真剣に考えなければいけない。下手をすると、アメリカ流の市場原理主義という安直な方向に流れる可能性はあります。

私の家では、10数年前のモノラルの20インチテレビが大活躍であるが、2011年には衛星放送や地上デジタルに触れてみたいものである。