月別アーカイブ: 2007年10月

『がなり説法』

高橋がなり『がなり説法』(インフォバーン 2002)を読む。
高橋氏は、佐川急便のサービスドライバーを経て、テレビ制作会社でテリー伊藤の下で働き、独立してアダルトビデオ会社ソフト・オン・デマンドを設立し、『¥マネーの虎』というバラエティ番組にレギュラー出演を果たし、現在では国立ファーム有限会社という農業経営の会社を立ち上げている。常に変革を追求していく風変わりな人物である。その著者が講演会や、雑誌「サイゾー」紙上のコラムを通じて、小さな成功や安定に胡座をかくことなく、常に「負け犬」的な挑戦者の気持ちを持つことの大切さを説く。
妻やら子ども、貯金、また途中で放り出せない仕事を抱えていると、困難に挑戦していく魂を忘れがちであるが、常に変わっていくことに対してドキドキ感を持つことは大切であると感じた。

うちの社員どもはすぐに「できねぇ」と言いやがる。何かといえば「人がいない」「予算が少ない」「時間が足りない」「自分は一生懸命やっているのに」……。だからオマエらは負け犬だって言われるんだよ。
今の自分の能力を肯定するなよ。肯定した瞬間にオマエらの成長はなくなるんだよ。100の能力の人間が100の仕事をしているうちは、200の能力になりっこないだろ。今できないと思う仕事をやり遂げて成功する経験値を積み上げてこそ初めて自分の限界を押し上げることができるんだよ。

「年収200万円 正社員を目指す」

nonfiction

一昨日の日曜日に録画したフジテレビの「ノンフィクション」という番組を見た。今回のテーマは「年収200万円 正社員を目指す」というもので、大手電機メーカーを自己破産で退職を強いられ日雇い労働をしながら正社員採用を目指す35歳の男性や、大手レコードメーカーをリストラされうつ病に苦しむ38歳の女性の悲哀な生活が画面に映し出されていた。正社員として仕事をしていた同じ30代の人たちが明日をも知れぬ生活を続け、結婚も出産も諦めざるを得ない状況に追い込まれてしまっている現実に驚きと同時に恐怖を感じた。この驚きと恐怖は、自分がその立場に置かれたことに対するものと同時に、このような日本になってしまったバブル崩壊以降の「失われた10年」を押し進めた政府に対するものである。

『通貨を読む:ドル・円・ユーロ・元のゆくえ』

滝田洋一『通貨を読む:ドル・円・ユーロ・元のゆくえ』(日経文庫 2004)を読む。
通貨の上げ下げについては、凡百のエコノミストがファンダメンタルズを基に見通しを語るが、外為法が改正されて一般投資家が24時間絶え間なく市場取引している以上、経済学者ケインズが「依拠しなければならない知識の基礎(経済的な分析結果)は極端に当てにならない」「ばば抜きゲーム」に過ぎない。滝田氏は外国為替市場は結局は美人ゲームであるが、美人ゲームを動かす長期的要因は分析可能であるとし、アメリカの金融政策やユーロ圏の政治状況、中国の経済政策を素人にも分かりやすく説明する。そうした主要通貨の中で特に日本円について警告を発している。日本政府は90年代の10年間を通して急激な円高を是正するために、円売りドル買いに走ったが、その結果買いためた米国ドルや米国国債に振り回されてしまっている。つまり米国政府の手先三寸で円高円安をコントロールされ、実質的な資産流出を招いている。
これ以上米国の思惑に振り回されないためにも、滝田氏は次のようなユーロを見習ったアジア経済圏−通貨圏の構築を提唱する。

通貨主権という言葉があり、通貨外交という言葉がある。われわれ日本人は、通貨こそはひとつの共同体を成り立たせる大切な絆だという事実を思い起こす必要がある。バブル崩壊後、不良債権処理という内向きな課題に追われてきた日本にとって、通貨の世界こそは「失われた十年」の最たるものだった。「預金封鎖」と題する書物が何種類も書店にうず高く積まれているという事実は、円という通貨の価値に自国民すら疑問を持っていることを意味すまいか。
長い目で見た日本の課題はハッキリしている。東アジア−中国−米国という経済交流が深まるなか、自らの比較優位を確保できる成長産業を発展させ、持続的な成長を果たすこと。欧州がECUという舞台でビジネスを競ったように、盾になるべきACU(Asian Currency Unit)という舞台で日本の金融が実力を発揮することだ。それは国民のお金を新たな成長機会に投じることにもつながる。円という通貨の未来図は、その延長線上に描かれるだろう。

『ベーシック/外国為替入門』

日本経済新聞社編『ベーシック/外国為替入門』(日本経済新聞社 1994)を読む。
まだ個人のデイトレーダーが今ほどいなかった頃に出版された本であり、公定歩合や経済指標、企業業績を分析し、さらに政治情勢や軍事情勢、資源・エネルギー状況など国際政治・経済を総合的に見る力が為替の動向を探る上で必要であると述べる。先日来、ネットで、素人トレーダーの取引動向のブログやスワップ金利だけで生活するなどの話にずっと目を通していたので、このようなまともな経済のテキストが新鮮に感じる。

ファンダメンタルズは一般に、一国の経済、通貨の健全性を示す基礎的な指標だとされています。代表的なものとしてあげられるのは、貿易収支、経常収支、インフレ率、生産性上昇率です。為替相場はその国の財やサービスの国際競争力を敏感に反映します。
(中略)現在の為替相場は、いわゆる「実需原則」の規制を外しているため、市場参加者が相場の先行きを見越して投機的な為替売買をするケースも増えています。それでも経済的な要因、中でもファンダメンタルズは相場を左右する主要な条件であることは言うまでもありません。外為市場がファンダメンタルズをどうみるかが、重要な決定要因となります。