月別アーカイブ: 2005年4月

『ルソー』

桑原武夫『ルソー』(岩波新書 1962)を読む。
言わずと知れた『社会契約論』『エミール』の著者であるルソーだが、改めて彼の思想の革新性に触れることが出来た。一般にルソーというとロックが提唱した「市民の権利」を絶対的なものと位置づけフランス革命の理論的な裏付けとなった偉大な人というイメージがある。しかし実際は当時のブルボン王朝体制を批判し、キリスト教も否定した人物のため、時の政府に嫌われ、晩年は執拗な警察の嫌がらせに耐えながらの生活だったようだ。ルソーというと民主主義の基礎を作ったと歴史の教科書には書かれているが、当時起こりつつあったブルジョワ民主主義すらも強く否定している。『人間不平等起源論』の中で次のように述べる。

土地にかこいをして「これは俺のものだ」と宣言することを思いつき、それをそのまま信ずるようなごく単純な人々を見出した最初の人間が、政治社会の真の建設者であった。杭を抜きとり、あるいは溝を埋めながら「こんなペテン師のいうことを聞いてはならない。果実は万人のものであり、土地は誰のものでもないことを忘れるなら、それこそ諸君の身の破滅だ!」とその同胞に向かって絶叫する者が仮にあったとしたら、その人は、いかに多くの犯罪と戦争と殺人を、またいかに多くの悲惨と恐怖を、人類にまぬがれさせてやれたことだろう。

ルソーの考える理想的な教育論を展開した作品として『エミール』が良く世間に知られているところである。教育史の本などを読むと、ルソーは子どもの持つ良い可能性を盲進し、孟子の性善説を地で行くような教育を展開したように書かれている。しかし、実際のルソーは孟子というよりは、老荘な「無為自然」を説いたのである。彼の思想はフランス革命に影響を与えたというよりも、1870年代のフランスのパリコミューンに直接的な影響を与えたと考えて良い。

ルソーが音楽教師時代に「むすんでひらいて」という曲を書いたという事実は「へぇ〜」70くらいあった。

マックOS10.4Tiger

先日、マックOS10.4Tigerを注文した。10.3よりもさらに軽くなっているそうで今から楽しみである。特にBluetoothを利用することができる画像編集アプリケーション(core image?)がデフォルトで入っているそうなので、先日買った東芝の携帯とうまく繋がるのか気になるところである。

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製品名: Mac OS X v10.4 “Tiger” アカデミック版

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『湯川秀樹』『映画少年・淀川長治』

まったく接点のなさそうな二人の伝記を取り上げてみたい。

二反長半『湯川秀樹』(ポプラ社文庫 1994)と荒井魏『映画少年・淀川長治』(岩波ジュニア新書 2000)の二冊を読んでみた。

湯川秀樹氏は1907(明治40)年生まれ、淀川長治氏は1909(明治42)年生まれとほぼ同時期に生まれている。湯川氏は学校の一方的な解法を強いる授業よりも数学や物理の世界に興味を持ち、淀川氏は映画館こそが学校であると湯川氏とは逆に理数科目はぼろぼろであった。そして二人とも青春時代を戦争とともに過ごし、戦争に対する批判として、湯川氏は平和のための科学技術の在り方を、淀川氏は平和の礎を築くための愛を映画に求めていった。戦争をどういう形で体験し、どう反省したのかということがこの世代の人間にとって大きなテーマである。文学だけでなく、映画や科学の世界でも戦争の総括が戦後の発展の岐路となっていったのだ。

アメクロー

marx050415

ニャホニャホ”アメ”クロー♪
アパートにいる時間が人間よりも多いためか、すっかりアパートのご主人様になっているマルクス君。

本能的なアメリカのフロンティア精神が発揮されているのか、植木鉢を倒したり、本棚の本をひっくり返したりといたずらも本格化している。先月までは注意で頭を叩いたらすたこらさっさと逃げていったのに、最近は頭をかなり強く叩いても平気になってきている。首の筋肉が強くなったようだ。

『やさしい環境問題のはなし』

最近転職に伴い、新しい職場で覚えることが多く、まだ緊張も抜けないためか夜はバタンキューの状態である。このホームページの更新も滞りがちである。4月の下旬に入って、花粉症もやっと症状が収まってきて、また、できるだけ多くの良書に出会いたいものである。

横田弘幸『やさしい環境問題のはなし』(法学書院 1997)を読む。
環境問題というと、先進国の政府も途上国の政府も、また、あらゆる政党、市民団体が「守るべきものだ」という立場を崩さないので、単に法令や宣言を見ても環境問題へのスタンスの違いが見えてこない。横田氏は原発訴訟や交通騒音の訴訟の丁寧な分析から、環境保全を口にしつつも企業論理を優先させる日本の政府の立場を露呈させている。教育問題や環境問題など誰しも全面的には批判できないような問題は、逐一個別裁判の判決内容を分析していくのが正しいアプローチなのであろう。