『教育思想(上):発生とその展開』

村井実『教育思想(上):発生とその展開』(東洋館出版 1993)を読む。
作者は慶応大学環境情報学部教授の村井純氏(日本のインターネット普及の草分けとして有名)の父である。この本の中ではギリシャ時代のソクラテスやプラトンからコメニウスやジョンロックなどの近代黎明期までの教育思想を系統立てて論じている。

古代から中世にかけては、キリスト教の普及やらルネッサンス、宗教改革などがありごちゃごちゃしていて整理がつかなかったが、作者は古代ギリシャの教育(Paideia)の発生にまで遡ってうまく教育の捉え方を3系統に分類し分かりやすく読者に提示している。その3系統とは、ソクラテスを代表とする〈善く生きようとする人間への関心に立つ〉人間主義と、プラトンを代表とする〈善さの理想への関心に立つ〉理想主義と、イソクラテスを源流とする〈現実社会での善さへの関心の上に立つ〉現実主義の3つである。

つまり作者はこれまでの教育思想は、子どもの中に成長の可能性を見出そうとするソクラテス的な捉え方と、子どもの外部に道徳を置き、その道徳に向けて教育を展開するプラトン的な捉え方と、現実の政治経済社会体制にうまく順応するための礼儀や温情、知識を磨いていくイソクラテス的な捉え方の3点に集約されるという。昨今の生徒指導や進路指導における現場での意見の相違などを冷静に見ていくと、上記の3分類された教育観の違いとして理解できるかもしれない。

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