渡辺洋三『日本国憲法の精神』(新日本新書 1993)を読む。
現在でも一部に正式な国会での議決を経たにも関わらず、憲法は押し付けられたものだと主張する政治家が多いが、そのような政治家は、戦後50年近くも憲法を国民のために使わず、腐らせて、挙げ句の果てにはダメだとわめいている怠け者だと渡辺氏は述べる。そして押し付けられたのは自衛隊の方であり、そもそも米国から押し付けられた違憲の自衛隊を「合法」化させるための憲法改正は根本からおかしいと断じる。先日イラクで人質となった高遠さんらに対し、多くのマスコミは「自己責任」と揶揄し、自民党の柏村武昭参院議員は「反政府・反日的分子」と批判したが、憲法の精神に立ち返るならば、違憲な自衛隊をイラクに派兵することの方が「無責任」であることは間違いない。
参考:1947年に当時の文部省が中学1年生のために編集した『あたらしい憲法のはなし』では以下のように述べられている。
こんどの憲法では、日本の国が、けっして二度と戦争をしないように、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは、「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、他の国よりもさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
もうひとつは、よその国と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけるということは、けっきょく、じぶんの国をほろぼすようなはめになるからです。また戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戦争の放棄というのです。そうしてよその国となかよくして、世界中の国が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の国は、さかえてゆけるのです。
みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように、また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。