小林朝夫『国語の神様バカを一喝!』(KKロングセラーズ 2001)を読む。
東京都三鷹市にある「リファイン学習教室」を主宰している作者が暇つぶしに書いたような本である。手に取るだけ時間の無駄であった。
月別アーカイブ: 2004年2月
『教育と教育政策』
宗像誠也『教育と教育政策』(岩波新書 1961)を読む。
東大教育学部の教授として、教育は人間の尊厳を確立することという一貫した信念のもとで教育行政学を確立した作者の著書であり、現在でも教育行政学のテキストとして用いられている。教育における憲法たる教育基本法の精神が、その下位法規である学校教育法施行令規則に法的根拠を置く学習指導要領で歪められてしまっている当時の現状を緻密に分析を加えている。その中でとりわけ教師の教育権についての分析が興味深かった。
教師の教育権は、教師が真理の代理者たることにもとづく、というほかないと考える。真理の代理者とは、真理を伝えるもの、真理を子どもの心に根づかせ、生かし、真理創造の力を子どもにもたせるもの、というような意味である。
法政大学文学部B方式
さっき法政のホームページで文学部B方式昨年の問題を見てみました。漱石の『草枕』からの出題でした。作中の主人公と作者の両面で問題が構成されています。昨年の傾向からするに、あらかじめ設問を予測して、解答案を数枚用意して臨むと良いでしょう。
さて、『光と風と夢』は私も読んだことがなく、今日ぱらぱらと読んでみました。解説など読む限り、作者中島敦は主人公のスチーブンソンに植民地政策批判をさせるという形をとりながら、暗に当時の日本の軍部独走による植民地政策への不満を描いています。中島敦の作品は全体像がつかみにくいので、「ここは」と思うポイントに線を引いておくとよいです。ネット上に次のような記載がありました。
「宝島」「ジキル博士とハイド氏」の作者である。ロバート・ルイス・スチーブンソンの晩年を描いた伝記的作品です。喘息の発作に悩まされていたスチーブンソンは、療養のため、南洋のサモアに移り住みます。そこで見聞した風俗・習慣、現地人との交流。また、西欧諸国の殖民地的搾取を目の当たりにしての憤慨などをモチーフとしながら、著者は、スチーブンソンの口を借りる形で、政治的発言や、自らの芸術哲学を語っています。軍部による、検閲が厳しさをますなかでの、痛烈な殖民地政策批判を語り、また、芸術とは、人間とはを問い掛ける中島の渾身の力作です。主人公のスチーブンソンは、喘息の為め若死していますが、中島も、三十三歳という若さで亡くなってしまいました。
この解説を読む限り、ポイントは次の3点が狙われそうです。1:スチーブンソンのサモア住民に対する見方がどのように変化したのか、2:不自由な南洋に移り住んで、人間の本質に対する見方がどのように変わったか、3:イギリスの植民地政策を批判している箇所、などを抜き出すとよいでしょう。そして、それらのポイントとこの作品が書かれた1942年という時代を作者中島敦がどのように捉えていたのかという時代観とを合わせてまとめてみると良いのでは?
憶測で書きました。不明な点ありましたら、連絡ください。
『夢 追いかけて』
河合純一『夢 追いかけて』(ひくまの出版 2000)を読む。
バルセロナ、アトランタ、シドニーのパラリンピックに出場した日本第一人者の全盲のスイマーの著者が、大学卒業後静岡の中学校の新米教師として教壇に立つ奮闘記である。表題の通り、中学生向けに「夢は現実にしてこそ夢」と熱意を持ち続けることと努力の大切さを伝える。
日本では「スポーツ」は文科省の管轄なのに、「障害者スポーツ」は厚労省の管轄下にあり、盲学校、養護学校、聾学校の部活は文科省の管轄だが、卒業後は厚労省の管轄でルールが異なってしまうこともあるという。そのためオリンピックとパラリンピックの選手が同じプールで泳ぐということはほとんどない。作者は「障害を持っていない人たちは、パラリンピックをスポーツとは別物と考えがちで、パラリンピックの選手は日本の代表というよりも、日本の障害者の代表という意識が強くなりやすい」と述べる。同じ水泳というスポーツの中でことさら外形的な区分を設けることには肯定できない。
しかし、オリンピックも同様であるが、パラリンピック選手がなぜ日本を代表しなければいけないのか。「日本国家」の象徴が天皇制のもと、「五体満足」な「健全」なファミリーという「あるべき姿」と規定されている以上、そうした国家論に乗っかること自体に欺瞞が生じてしまうだろう。
『勝つためのレシピ』
平石貴久『勝つためのレシピ』(光文社新書 2001)を読む。
柏レイソルのチームドクターを務める著者による、栄養管理に関する入門書である。激しいスポーツに熱を傾けるアスリートこそ、科学的なデータに基づく綿密な栄養計画が大切だと述べる。人間の筋肉には無酸素運動を行い、8秒間持続する「ATP-CP系」と33秒持続する「乳酸系」の2種類と、またミトコンドリア内でエネルギーを作り出し続ける有酸素運動の「TCAサイクル系」の3種類のエンジンで構成されている。必要な栄養素も、摂取時期もそれぞれの筋肉よって異なるため、試合前日、当日、試合中、試合後の時間軸に沿った食事指導が求められる。さらに、エネルギーの供給と代謝に関わるビタミンB群と疲労の回復、免疫作用に関わるビタミンCの効果的な摂取と、そうした栄養指導の行き渡る環境の両面が大切であるという。つまり選手個人個人の意識改革と努力、そして選手を支えるコーチ、スタッフ間の連繋をもスポーツドクターの指導領域であるとしている。
選手一人一人の栄養指導による成長が分かりやすく述べられており、納得しやすい内容であった。