月別アーカイブ: 2004年1月

『学校って、なんだろう』

産經新聞『じゅく~る』取材班編『学校って、なんだろう』(新潮文庫 2002)を読んだ。
近年問題化している不登校や学力低下などは生徒個別の問題だけでなく、学校総体としてのレーゾンデートル(存在理由)が根底から揺らいでいるという現状認識を示した上で、学校の「スリム化」こそが根本的な解決策であると述べる。しかし、競争原理導入による学校の多様化、学校に対する保護者の責任の自覚の植え付けという保守的な立場からの意見だけでなく、「教育困難校」やフリースクール、阪神大震災後の学校状況など紹介しながら、学校現場の問題点を丁寧に取材している。学校現場に属しているものにとって、マスコミの教育提案というものはピント外れなものが多いが、取材に時間をかけ、様々な立場の人のコメントがあり、納得できる点が多かった。取材班は学校改革に向けた提言として以下の点を指摘する。

  1. 学校、とりわけ義務教育段階の学校は、人間として、社会の一員として生きるために必要な、最低限度の知識や社会・集団におけるルールを与える場である。その認識の上に立ち、スリム化を進めるべきである。
  2. しかし、「ニーズ・価値観・生き方の多様化」も踏まえて、学校における教育方法の多様化、児童・生徒、父母の学校選択の自由化を進め、とりわけ高校の個性化・多様化を一層進めるべきであろう。
  3. 学校は、時代を担う子どもたちを育てる場である。今以上に変化の激しい時代、不透明な時代を生きるであろう子どもたちが、希望を持って生き抜くことができるように育むことも不可欠である。
  4. 学校は、地域・社会の貴重な財産である。失われつつある地域社会が再生するための拠点としても、学校は大きな可能性を持っている。
  5. 子どもの教育に最終的に責任を持つのは親である。だからこそ、学校は親や地域に開放されるべきだし、教師自身にも意識改革が求められる。

『文明の衝突と21世紀の日本』

サミュエル・ハンチントン『文明の衝突と21世紀の日本』(集英社新書 2000)を読む。
1993年に出版された「文明の衝突」の抜粋と1998年に東京で行われた講演「二十一世紀における日本の選択ー世界政治の再構成」がまとめられている。ハーバード大教授であり、ケネディ政権とカーター政権においてはホワイトハウスで外交・安全保障の政策立案に関わった経歴を持つハンチントン氏の名前と「文明の衝突」という論文名はよく目にしていたが、実際読むのは初めてだった。「文明の衝突」というありきたりな邦訳のため、読まないうちから「そんなの当たり前じゃないか」と高をくくっていたためである。しかし読んでみると予備校の参考書を読んでいるようで、ところどころほんまかいなと思う箇所もあるが、「ハンチントン理論」通りに各地の紛争の背景を説明されると目から鱗が落ちるように国際政治が「分かった」ような気がした。

ハンチントン氏は2極の冷戦構造が崩壊した後、世界の慈悲深い親切な支配者を任じているアメリカといくつかの大国からなる「一極・多極」世界であると分析する。そして世界を7もしくは8つの地域文明に分け、超大国アメリカとそれぞれの文明の地域大国(独仏、ロシア、中国、インド、インドネシア、イラン、イスラエル、ナイジェリア、南アフリカ、ブラジル、日本)との複雑な駆け引きのもとに世界が動いていると論じる。前記の地域大国に取ってアメリカは政治、経済、文化、軍事と様々な面で介入してくるやっかいものである。しかしそれぞれの地域を支配していく後ろ盾としてアメリカとの同盟、協調路線は欠かせない。つまり地域大国はアメリカ追随か、拒否かを様々な局面で試されることになる。皮肉なことに、アメリカ政府はそうした地域大国の政策のぶれを逆手にとって、地域のナンバー2の大国と同盟関係を結んで地域大国を封じ込めようとする。つまりEUにおける独仏の支配強化を憂うイギリスと、ロシアの拡大を苦慮するウクライナと、そして中国の強大化を懸念する日本、韓国と、インドと争っているパキスタンと、ブラジルの経済発展を懸念するアルゼンチンと、またイランやイラクの石油独占を止めるためにサウジアラビア、エジプトといった地域の2番手の国々と軍事同盟、経済協力体制を構築している。そしてアメリカはこれらの2番手の国々の軍事力を「国際貢献」の名の下に活用し、地域大国へ圧力をかけているというのだ。今回のイラクへの多国籍軍の参加についても、中国や独仏ロシアといった大国への牽制の意味合いが含まれている、いやそもそもイラクへの戦争自体がまやかしであったことは銘記しておくべきだろう。賛否あるだろうが、是非一読をオススメしたい。

『聴け。爆笑問題』

爆笑問題『聴け。爆笑問題』(アミューズブックス 2000)を読む。
爆笑問題両氏の思い出の一曲を語るというラジオのコーナーが一冊の本になったものである。テキトーに読み過ごしたが、サザンや佐野元春についてのマニアックなまでのこだわりが面白かった。

昨日芥川賞が発表になった。19歳の綿矢さん、20歳の金原さんの史上最年少の女性の受賞となった。早く手に入れて読んでみたいものである。

『白く長い廊下』

川田弥一郎『白く長い廊下』(講談社1992)を読む。
医療事故をキッカケとして、県下の病院における大学の勢力争いが過熱化していくという内容である。特に大学の医局を中心とした学閥体制は強固に残っており、数々の弊害を生み出しているという指摘は現在放映している『白い巨塔』にも通じるテーマであり、今後もしばらくは続いていくのだろう。

先日仕事で中学入試を検討する機会があった。中学入試では出てくる文章や設問の全てにおいて、小学校必修の「教育漢字」以外の漢字には全てふりがなを振らなくてはいけない。「教育漢字」は1945字から成る常用漢字の約半数の1006字で構成され、小学校の学年別に配当されている。しかし日常頻度の高い漢字を集めているとの事だが、「天皇陛下」の「陛」、「皇后」の「后」が小学校6年生に配当されているというのは、いかにも出来過ぎだ。果たして1億2千万の日本人のうち、「陛」という字を使う人間は何人いるのだろうか。少なくとも私は書けと言われても躊躇してしまうだろう。

「ダウンタウンDX」

本日「ダウンタウンDX」という番組を観た。
ゲストに小泉首相の息子である小泉孝太郎さんが出ていた。ちょうど孝太郎が父親の素顔を語るというコーナーだった。孝太郎氏がいろいろと首相の日本酒の飲み方など家族しか知らない素顔を打ち明けるのだが、ダウンタウンの松本氏は「そうじゃなくて、小泉さんがカッパエビセンをこう(袋を逆さまにして口を近づける真似)しながら食べているという話が聞きたいんじゃ」と突っ込むシーンがあった。松本氏のこの発言はかなり鋭いと思った。確かに小泉さんのキャッチボールをする姿や、酒の飲み方も彼の「実の姿」を現している。しかし、松本氏の指摘するようにカッパエビセンの食べ方ほど小泉さんの「真の姿」をさらすものはないであろう。